小酒井不木小説作品明細

(リニューアル公開:2006年1月1日 最終更新:2020年4月5日)
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1926(大正15)年

  1. 「手紙の詭計」(『苦楽』大正15年1月号)
  2. 「暴風雨の夜」(『講談倶楽部』大正15年1月号)
  3. 「白痴の智慧(一)」(『子供の科学』大正15年1月号)
  4. 「恋愛曲線」(『新青年』大正15年1月号)
  5. 「人工心臓」(『大衆文芸』大正15年1月号)
  6. 「外務大臣の死」(『苦楽』大正15年2月号)
  7. 「白痴の智慧(二)」(『子供の科学』大正15年2月号)
  8. 「三つの痣」(『大衆文芸』大正15年2月号)
  9. 「段梯子の恐怖」(『探偵趣味』大正15年2月号)
  10. 「白痴の智慧(三)」(『子供の科学』大正15年3月号)
  11. 「肉腫」(『新青年』大正15年3月号)
  12. 「催眠術戦」(『苦楽』大正15年4月号)
  13. 「名探偵」(『女性』大正15年4月号)
  14. 「安死術」(『新青年』大正15年4月号)
  15. 「秘密の相似」(『新青年』大正15年4月号)
  16. 「直接証拠」(『大衆文芸』大正15年4月号)
  17. 「三つの証拠」(『講談倶楽部』大正15年5月号)
  18. 「桐の花」(『新青年』大正15年5月号)
  19. 「深山の桜」(『新青年』大正15年5月号)
  20. 「死の接吻」(『大衆文芸』大正15年5月号)
  21. 「十円紙幣」(『日本少年』大正15年5月号)
  22. 「新聞紙の包」(『苦楽』大正15年6月号)
  23. 「印象」(『新青年』大正15年6月号)
  24. 「血の盃」(『現代』大正15年7月号)
  25. 「躓く探偵」(『講談倶楽部』大正15年7月号)
  26. 「紫外線(一)」(『子供の科学』大正15年7月号)
  27. 「卒倒」(『新青年』大正15年7月号)
  28. 「狂女と犬」(『大衆文芸』大正15年7月号)
  29. 「猫と村正」(『週刊朝日』大正15年7月特別号)
  30. 「偶然の成功」(『苦楽』大正15年8月号)
  31. 「紫外線(二)」(『子供の科学』大正15年8月号)
  32. 「宝刀の犯人」(『幼年の友』大正15年8月号)
  33. 「愚人の毒」(『改造』大正15年9月号)
  34. 「紅蜘蛛の怪異」(『キング』大正15年9月号)
  35. 「紫外線(三)」(『子供の科学』大正15年9月号)
  36. 「メヂユーサの首」(『大衆文芸』大正15年9月号)
  37. 「妲已の殺人」(『苦楽』大正15年10月号)
  38. 「汽車の切符」(『現代』大正15年10月号)
  39. 「ひすゐの簪」(『講談倶楽部』大正15年10月号)
  40. 「不思議な煙」(『子供の科学』大正15年10月号)
  41. 「新案探偵法」(『大衆文芸』大正15年10月号)
  42. 「劇場の事変」(『講談倶楽部』大正15年11月号)
  43. 「肖像の怪」(『日本少年』大正15年11月号)
  44. 「塵埃は語る(一)」(『子供の科学』大正15年12月号)

「手紙の詭計」 #kuraku_192601

【データ】

初出: 『苦楽』 1月特別号 第5巻第1号 大正15年1月1日発行 152ページ〜165ページ
署名:
章題: 一/二/三/四/五/六/七/八
挿画: 山六郎
備考: 角書き「探偵瑣談」。

 

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「手紙の詭計」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「暴風雨の夜」 #koudanclub_192601

【データ】

初出: 『講談倶楽部』 ■巻■号 大正15年1月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

 月に一度の怪談会の席で、一緒に寝た相手が目覚めたら異形の者に変わっていたら……、という話題になった。M医師は自信をもって、そういう事態になれば、人間は気絶又は発狂すると断言する。そして、その例証となるエピソードを、M医師は語り始めた。医師の許を訪れた一人の花柳病患者。彼は初期梅毒と診断されたが、それを隠して旧家の箱入娘との縁談を進める。彼は婿養子先の財産に目が眩み、一日でも早く結婚してしまおうとしていたのだ。計画通り結婚し、妻の友江にその病を感染させてしまった信之はその事実を隠す為、梅毒の症状が脳にまで進行して発狂状態にある友江を医者にも見せず、しかし自分は遊蕩の限りを尽くす。そんなある日、新しい女中として、澤という美しい女が雇われてきた。澤に惚れ込んだ信之は、妊娠中の友江を土蔵に閉じ込めてしまったばかりか、澤をものにするべく友江殺害を計画する。そしてある暴風雨の夜、事件は起こった……。
 ○○の会でのエピソード、という形式も、怪談仕立ての展開も、共に不木の得意パターン。そういう意味で典型的不木短編であると同時に、あまりにも作り物めいた展開が「煩悶のない」「超人間」的造形と捉えられているのだろうとも想像出来、その意味でも実に不木的な作風といえる。

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『明治大正文学全集56』(春陽堂・昭和6年8月15日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)
 『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』(角川書店・平成17年3月)

【翻刻テキスト】 → 「暴風雨の夜」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「白痴の智慧(一)」 #kodomonokagaku_192601

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年1月号 ■〜■ページ 連載第1回(全3回)
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】
 「小酒井不木の児童文学 ―〈少年科学探偵〉シリーズを中心に―」上田信道(『国際児童文学館紀要 第11号』大阪国際児童文学館・1996.3.31)

【収録書名】
 『少年科学探偵(不木少年科学探偵集 第一編)』(文苑閣・大正15年12月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『少年冒険小説全集第三巻 少年科学探偵集』(平凡社・昭和5年6月12日発行)
 『少年文庫152 少年科学探偵』(春陽堂・昭和7年12月25日発行)
 『紅色ダイヤ』(平凡社・昭和21年4月20日発行)
 『紅色ダイヤ』(世界社・昭和23年6月10日発行)
 『少年少女世界の名作文学48 日本編4』(小学館・昭和42年1月20日発行)
 『少年小説大系7 少年探偵小説集』(三一書房・昭和61年6月30日発行)
 『小酒井不木探偵小説選』(論創社・平成16年7月25日発行)
 『少年科学探偵』(真珠書院・平成25年8月10日発行)

【翻刻テキスト】 → 「白痴の智慧(一)」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「恋愛曲線」 #shinseinen_192601

【データ】

初出: 『新青年』 ■巻■号 大正15年1月号 ■〜■ページ
署名: 小酒井不木
章題:
挿画:
備考:  

「親愛なるA君!」で始まる「僕」の手記。それは彼の結婚の贈り物として「僕」が「恋愛曲線」を完成させるまでの道のりを語るものだった。失恋の痛手を克服する為に研究に没頭する「僕」の研究対象は心臓。心臓を流れる血液の状態をグラフ化し、それが様々な感情の刺激によって変化することを発見した「僕」は「失恋曲線」の作成を思いつく。数々の試行錯誤・動物実験を重ね、遂に人間の心臓を使って自らの血をサンプルに「失恋曲線」を描き出すことに成功した「僕」が、次に着手したのが「恋愛曲線」の作成だった。「僕」の理論はこうだ。失恋者の心臓に失恋者の血液を流したならば、その感情はマイナスとマイナスがかけ合わされ、プラスすなわち「恋愛」へと転化する。そしてついに「僕」の実験が始まった……。
 曲線作成の背後にある物語を、大抵の読者は途中で見抜いてしまうだろう。だがそんな事は欠点ではない。この感情を抑えに抑えた手記の筆致の凄絶さ。甘過ぎるほどに甘い極限のロマンスがここにある。不木の描く登場人物に弱者の感情がないという批判は少なくともここでは的外れだ。愛情も憎悪も絶望も、全てを抱えてなお科学者としての仕事の内にしかそれを表現出来ない人間の哀切。そんな感情をこんな風に描ける作家は、小酒井不木しかいない。

【同時代評・関連資料その他】
 「正月の探偵雑誌から」甲賀三郎(『読売新聞』大正14年12月15日号)
 「探偵小説壇の諸傾向」平林初之輔(『新青年』大正15年2月増刊号)
 「マイクロフオン」國枝史郎(『新青年』大正15年3月号)
 「マイクロフオン」水谷準(『新青年』大正15年3月号)
 「マイクロフオン」江戸川乱歩(『新青年』大正15年3月号)
 「マイクロフオン」白石潔(『新青年』大正15年3月号)
 「マイクロフオン」本田緒生(『新青年』大正15年3月号)
 「マイクロフオン」西田政治(『新青年』大正15年3月号)
 「マイクロフオン」横溝正史(『新青年』大正15年3月号)
 「一号一人(二)」本田緒生(『探偵趣味』大正15年3月号)
 「病中偶感」江戸川乱歩(『探偵趣味』大正15年4月号)
 「マイクロフオン」甲賀三郎(『新青年』大正15年5月号)
 「探偵文壇鳥瞰」國枝史郎(『新青年』大正15年12月号)
 「本年度に於て発表された、創作並びに翻訳探偵小説中、貴下の印象に残っている作品」巨勢洵一郎(『新青年』大正15年12月号)
 「本年度に於て発表された、創作並びに翻訳探偵小説中、貴下の印象に残っている作品」伊藤松雄(『新青年』大正15年12月号)
 「本年度に於て発表された、創作並びに翻訳探偵小説中、貴下の印象に残っている作品」平林初之輔(『新青年』大正15年12月号)
 「本年度に於て発表された、創作並びに翻訳探偵小説中、貴下の印象に残っている作品」角田喜久雄(『新青年』大正15年12月号)
 「本年度に於て発表された、創作並びに翻訳探偵小説中、貴下の印象に残っている作品」相原藤也(『新青年』大正15年12月号)
 「本年度に於て発表された、創作並びに翻訳探偵小説中、貴下の印象に残っている作品」本田緒生(『新青年』大正15年12月号)
 「『恋愛曲線』雑感」田中早苗(『探偵趣味』昭和2年4月号)
 「なつかしき小酒井不木」菰田正二(『医家芸術』昭和48年2月号)
 「解剖台上のロマンチシズム=小酒井不木論」権田萬治(『幻影城』昭和50年2月号)
 「解説」中島河太郎(『日本探偵小説全集1 黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集』東京創元社・昭和59年12月21日発行)
 「小酒井不木」「科学小説」中島河太郎(『日本推理小説辞典』東京堂出版・昭和60年9月30日発行)
 「第十五章 葛山、小酒井、妹尾その他」中島河太郎(『日本推理小説史 第二巻』東京創元社・平成6年11月30日発行)
 「解説」中島河太郎(『くらしっくミステリーワールド6 小酒井不木集』リブリオ出版・1997年2月)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『新青年叢書3 小酒井不木傑作選集』(博文館・昭和4年6月18日発行)
 『探偵小説全集2 小酒井不木集』(春陽堂・昭和4年10月8日発行)
 『明治大正文学全集56』(春陽堂・昭和6年8月15日発行)
 『日本小説文庫219 恋愛曲線』(春陽堂・昭和7年12月15日発行)
 『日本探偵小説傑作集』(春秋社・昭和10年9月22日発行)
 『闘争』(春秋社・昭和10年10月5日発行)
 『日本探偵小説傑作集』(一号館書房・昭和23年2月30日発行)
 『日本探偵小説傑作集 第二集』(新府書房・昭和23年11月)
 『探偵実話』昭和27年3月増刊号
 『日本探偵小説全集 短篇集』(春陽堂・昭和29年5月30日発行)
 『現代国民文学全集27巻 現代推理小説集』(角川書店・昭和33年6月30日発行)
 『日本推理小説大系6 昭和前期集』(東都書房・昭和36年5月)
 『SF倶楽部』第3号(昭和45年2月28日発行)
 『世界SF全集 34 日本のSF(短篇集)古典篇』(早川書房・昭和46年4月30日発行)
 『医家芸術』昭和48年2月号
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)
 『日本探偵小説全集1 黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集』(東京創元社・昭和59年12月21日発行)
 『人工心臓』(国書刊行会・平成6年9月20日発行)
 『小酒井不木集』(リブリオ出版・平成9年2月28日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)
 『べんせいライブラリー ミステリーセレクション 魔の怪』(勉誠出版・平成14年11月15日発行)
 『フロンティア文庫86 日本ミステリー名作集【2】』(フロンティアニセン・平成17年5月31日発行)
 『恋愛ミステリー傑作選 恋は罪つくり』(光文社・平成17年7月20日発行)

【翻刻テキスト】 → 「恋愛曲線」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「人工心臓」 #taishuubungei_192601

【データ】

初出: 『大衆文芸』 ■巻■号 大正15年1月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

 人工心臓の開発者、生理学者のA博士は夫人の死をきっかけに人工心臓の研究の全てを擲ったのだった。
 博士は大学を出ると夫婦で研究室に住み込んで、寝食を忘れて人工心臓の開発に没頭する。古代ギリシャから綿々と続く、生命に関する生気説・機械説の論争に終止符を打ち、肺をガス交換運動から解放する事で空中の窒素から栄養を摂取する事を可能ならしめ、食糧問題すらも解決する事が出来る驚異の発明、人工心臓。研究中に結核を病んだA博士は、人工心臓完成の暁には、人間は死の恐怖からさえ逃れ得る、と更に研究に熱がこもる。そして遂に人体に応用出来る人工心臓は完成した。それを初めて使う人間。それは、自らも肺を病みながら博士の研究を支え続け、今まさに臨終の床にある、博士の夫人であった……。
 日本古典SF短編の傑作にも数えられる本編。小酒井不木のイマジネーションは死を超克した所に限りなく哀切な叫びを見出した。生命機械論に対する一種の反論と捉える向きもあるが、不木が物語に込めた思いは元々、生命とは何ぞや、という問いではなく、死と向かい合うのが生命というものである、という事だったのではないだろうか。それにしても『大衆文芸』誌の読者は、この怒濤の医学的言説に呆気にとられたに違いない。また、研究半ばで肺結核に倒れ、血に塗れながら死を思う博士の言葉はこの作者ならではのリアリティに満ちている。奇抜な設定に隠れてしまっているが、この辺りの心理描写にも読み所は多い。(2007.3.19記)

【同時代評・関連資料その他】
 「小酒井不木」「科学小説」中島河太郎(『日本推理小説辞典』東京堂出版・昭和60年9月30日発行)
 「第十五章 葛山、小酒井、妹尾その他」中島河太郎(『日本推理小説史 第二巻』東京創元社・平成6年11月30日発行)
 「解説」中島河太郎(『くらしっくミステリーワールド6 小酒井不木集』リブリオ出版・1997年2月)
 「解説 不老不死の野望の果てに」長山靖生(『懐かしい未来 ――甦る明治・大正・昭和の未来小説』中央公論新社・2001年6月10日発行)

【収録書名】
 『探偵名作叢書第一集 死の接吻』(聚英閣・大正15年5月25日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『日本小説文庫415 大雷雨夜の殺人』(春陽堂・昭和11年11月5日発行)
 『日本探偵小説全集 短篇集』(春陽堂・昭和29年5月30日発行)
 『SF倶楽部』第3号(昭和45年2月28日発行)
 『日本SF古典集成2』(早川書房・昭和52年7月31日発行)
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)
 『人工心臓』(国書刊行会・平成6年9月20日発行)
 『大雷雨夜の殺人』(春陽堂書店・平成7年2月25日発行)
 『小酒井不木集』(リブリオ出版・平成9年2月28日発行)
 『懐かしい未来 ――甦る明治・大正・昭和の未来小説』(中央公論新社・平成13年6月10日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「人工心臓」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「外務大臣の死」 #kuraku_192602

【データ】

初出: 『苦楽』 2月号 第5巻第2号 大正15年2月1日発行 302ページ〜313ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二/三/四/五
挿画: 山六郎
備考: 角書き「探偵瑣談」。

 

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『人工心臓』(国書刊行会・平成6年9月20日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「外務大臣の死」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「白痴の智慧(二)」 #kodomonokagaku_192602

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年2月号 ■〜■ページ 連載第2回(全3回)
署名:
章題:
挿画:
備考:  


 (「白痴の智慧(一)」を参照

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 (「白痴の智慧(一)」を参照

【翻刻テキスト】 → 「白痴の智慧(二)」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「三つの痣」 #taishuubungei_192602

【データ】

初出: 『大衆文芸』 ■巻■号 大正15年2月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

 法医学者B氏の開発した「腸管拷問法」。それは直接証拠のない有力な容疑者を自白させる為に考え出された恐怖の訊問法だった。容疑者を解剖に立ち会わせ、被害者の死体から取り出した腸管を特殊な容器の中でさも生きているかのように蠕動させるのである。この訊問法によって氏は多くの容疑者を自白に追い込んで来た。ある日やって来た容疑者の男は頬に毒蛾の形の痣を持っていた。被害者は妊婦。B氏は男の落ち着き払った態度に危惧を抱く。そこで氏は腸管拷問法が通じなかった場合、腹の中の胎児の頬に男と同じ形の痣を描き、それを男に見せてショックを与えるという策を考えた。予期した通り、男は腸管拷問法に動ずる気配がまるでない。そこでB氏は最後の手段を講ずるが……。
 タイトル通りの「三つの痣」へと至るブラック・ユーモア溢れる展開にまず唖然とさせられる。自分のサド的性質を十分に理解し、容疑者を何としてでも驚かし、苦しませずにはいられないB氏の強烈な人物像には、どことなく不気味な「笑い」の影がつきまとう。グロテスク趣味横溢、医学知識に裏打ちされた筆はまさに不木の十八番。しかし誰が何と言おうと、この作品の一番の価値はこの「笑い」の味にある。(2007.3.19記)

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『探偵名作叢書第一集 死の接吻』(聚英閣・大正15年5月25日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『日本小説文庫416 展望塔の死美人』(春陽堂・昭和11年10月30日発行)
 『ルック・エンド・ヒヤー』昭和24年9月号
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「三つの痣」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「段梯子の恐怖」 #tanteishumi_192602

【データ】

初出: 『探偵趣味』 2巻2号 大正15年2月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

『探偵趣味』誌を読んでいた弁護士のFは、そこに書かれた「段梯子の恐怖」というテーマについて一つのエピソードを語り始める……。女性教師のSさんは歳の離れた妹と二人きりの家族だった。彼女は妹の母代わりとなって独身で働きづめだったが、その甲斐あって美しく成長した妹は女学校を卒業し、いよいよ見合いをする運びとなった。仲介役の校長夫妻と連れ立ってやって来た青年はSさんの家の二階に通された。妹と青年とはお互いに好意を持ったらしく、見合いは非常に和やかに進んだ。そして菓子が運ばれ、果物が運ばれ、一時間ばかりが過ぎた後、食べ余った林檎の残りの皿を下げに階下に降りようとした妹は、どういうはずみか二三段降りたところから、大きな音を立てて落下した……。
 結末における捻りがあるとはいえ、なにしろ非常に短い作品であり、内容的にも小説のネタを一つ開陳して見せただけのようなもの。普通であればここから物語の筋を考えて肉付けをしてゆくのであろう、と想像出来る。いわゆる商業誌に提供する小説とはひと味違った、『探偵趣味』同人に向けての一種の創作談義だろう。『探偵趣味』が届くところから始まるという、“メタ小説”めいたアイディアも、ちょっとした実験か、悪戯気を出してみたのか、とにかくそれほど深い意味は感じられない。アイディアマン小酒井不木の手遊びの一編という印象が強い作品である。(2007.3.19記)

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『幻の探偵雑誌2 「探偵趣味」傑作選』(光文社・平成12年4月20日発行)

【翻刻テキスト】 → 「段梯子の恐怖」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「白痴の智慧(三)」 #kodomonokagaku_192603

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年3月号 ■〜■ページ 連載第3回(全3回)
署名:
章題:
挿画:
備考:  


 (「白痴の智慧(一)」を参照

【同時代評・関連資料その他】
 (「白痴の智慧(一)」を参照

【収録書名】
 (「白痴の智慧(一)」を参照

【翻刻テキスト】 → 「白痴の智慧(三)」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「肉腫」 #shinseinen_192603

【データ】

初出: 『新青年』 ■巻■号 大正15年3月号 51ページ〜55ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二
挿画:  
備考:  

 悪性腫瘍に右手を冒され、あとは死を待つばかりに衰弱しきった男の最後の願いは、憎い腫瘍を手術によって切り離してもらう事だった。霊験に頼り、信心に頼り、ありとあらゆる治療に頼っても功を奏さず、長年に渡って自分を苦しめてきたこの腫瘍を切り離し、自らの手で思う存分切り刻んでやりたい……。手術は右手切断という、弱り切った男の身体には文字通り命懸けの大手術である。しかし医師は男の痛切な願いを聞き入れ、何とか手術を成功させた。麻酔が切れて目を覚ました男は妻の手を借り、ベッドの上に半身を起こした。そして、安静にするように、という医師の説得にも耳を貸さず、切り取った腫瘍を目の前に持って来てくれるように懇願する。琺瑯の盆に乗せられ、まるで一個の生物であるかのような男の右腕が運ばれて来た。男は医師からメスを借りると、その憎むべき腫瘍と対峙した……。
 不木お得意の医学ホラーだが、命を懸けて腫瘍への復讐を誓った男の満願成就の結末は実に凄絶なナンセンス。ただ物語としては比類なきオリジナル、という程でもない(具体名は出ないが類似した作品がかなりありそうに思われる程度)ので、まあまあ標準作、といったところか。

【同時代評・関連資料その他】
 「マイクロフオン」大下宇陀児(『新青年』大正15年7月号)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『新青年叢書3 小酒井不木傑作選集』(博文館・昭和4年6月18日発行)
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『明治大正文学全集56』(春陽堂・昭和6年8月15日発行)
 『闘争』(春秋社・昭和10年10月5日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「肉腫」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「催眠術戦」 #kuraku_192604

【データ】

初出: 『苦楽』 4月号 第5巻第4号 大正15年4月1日発行 188ページ〜201ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二/三/四/五
挿画: 山六郎
備考: 目次角書き「生活瑣談」。

 

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「催眠術戦」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「名探偵」 #zyosei_192604

【データ】

初出: 『女性』 ■巻■号 大正15年4月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考: 特集「ラジオ探偵小説」の中の一篇。

【同時代評・関連資料その他】
「解剖台上のロマンチシズム=小酒井不木論」権田萬治(『幻影城』昭和50年2月号)

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)

【翻刻テキスト】 → 「名探偵」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「安死術」 #shinseinen_192604_01

【データ】

初出: 『新青年』 ■巻■号 大正15年4月号 8〜14ページ
署名: 小酒井不木
章題: なし
挿画:
備考:  

 安死術――万一にも恢復する見込みのない患者に対しては、その苦痛を一刻も早く取り除いてやる為に、安楽死も妥当な処置と信ずる医師は、郷里の山村に戻って開業すると、多くの患者に対して秘かに安死術を施すようになった。すると世間では「あの先生にかゝると、誠に楽な往生が出来る」と評判になり、さらに多くの患者がおしかけるようになる。そんなある日、医師の息子が崖から転落して虫の息で病院に運び込まれてきた。動転した医師は咄嗟に息子にカンフル注射を施す。その注射によってわずかに息を吹きかえした息子は、医師を驚愕させる一言を発してすぐに息を引き取ってしまった……。
 安楽死とは根本的に患者の為のものなのか? 愛する家族の危機に平素の信念を忘れた医師は、自分の行動がもたらした悲惨な結末に絶句する。「死なせる」事にまつわる幸福と不幸を独自のスタイルで逆接的に描いた一編。冒頭に置かれた安死術についての信条の吐露が不気味な熱を帯びていて、結末の背筋も凍る一言をより一層引き立てている。

【同時代評・関連資料その他】
 「マイクロフオン」川田功(『新青年』大正15年5月号)
 「マイクロフオン」早苗生(『新青年』大正15年5月号)
 「マイクロフオン」平林初之輔(『新青年』大正15年5月号)
「解説」中島河太郎(『くらしっくミステリーワールド6 小酒井不木集』リブリオ出版・1997年2月)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『新青年叢書3 小酒井不木傑作選集』(博文館・昭和4年6月18日発行)
 『人工心臓』(国書刊行会・平成6年9月20日発行)
 『小酒井不木集』(リブリオ出版・平成9年2月28日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「安死術」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「秘密の相似」 #shinseinen_192604_02

【データ】

初出: 『新青年』 ■巻■号 大正15年4月号 15〜21ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二
挿画:
備考:  

 初夜を泣いて拒んだ花嫁は翌日実家に戻り、帰って来なかった。そして彼女から新郎宛てに手紙が届く。それは彼女がそうせねばならなかった重大な秘密の告白だった……。数年前網膜炎を患った自分は、実は右の眼を失明している。見た目では気づかれないので黙って見合いを進めてしまったが、あなたに対して嘘をつき続ける事に堪えられなくなってしまった。しかも子供が出来て、万一この病気が遺伝してしまうような事になっては取り返しがつかない……。彼女の告白を受け入れた新郎は、自分の秘密を彼女に告白し、彼女の事を許す。彼女は驚くと同時に喜び、互いの欠陥を補い合って幸せに暮らそうと彼に返事を書いたのだが……。
 網膜炎イコール遺伝病というわけではないので、そういう物の考え方をする人という設定になっている、として読むべし。男性上位社会、〈家〉社会の犠牲者と役割づけられている女の側からの手痛いしっぺ返しの図だが、どうにも白々しい。理由は彼女が男を非難する姿勢が、とってつけたように表層的な「対社会」の論理で描かれているからだ。人物としての彼女の悩みはこんな形ではないだろうし、こんな文面で男を批判したりはしないだろう。場面と筋が如何にも作り物臭く浮いている。小説は所詮作り物。であるが故にもっと「小説らしく」作らなくては駄目。読後感が悪い上、小説としての完成度は平均点以下だ。

【同時代評・関連資料その他】
 「マイクロフオン」甲賀三郎(『新青年』大正15年5月号)
 「マイクロフオン」川田功(『新青年』大正15年5月号)
 「マイクロフオン」早苗生(『新青年』大正15年5月号)
 「マイクロフオン」平林初之輔(『新青年』大正15年5月号)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『新青年叢書3 小酒井不木傑作選集』(博文館・昭和4年6月18日発行)
 『明治大正文学全集56』(春陽堂・昭和6年8月15日発行)
 『日本小説文庫219 恋愛曲線』(春陽堂・昭和7年12月15日発行)
 『闘争』(春秋社・昭和10年10月5日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「秘密の相似」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「直接証拠」 #taishuubungei_192604

【データ】

初出: 『大衆文芸』 第1巻第4号 4月1日発行 130ページ〜150ページ
署名: 小酒井不木
章題: 『一』/『二』/『三』/『四』/『五』/『六』/『七』
挿画: 伊藤幾久造
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『探偵名作叢書第一集 死の接吻』(聚英閣・大正15年5月25日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『くろがね叢書 第二十号』(くろがね会・昭和19年7月31日発行)
 『読物クラブ』昭和23年4月号
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)
 『ミステリー総合病院』(光文社・昭和56年11月)
 『ミステリー総合病院』(光文社・平成4年6月)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「直接証拠」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「三つの証拠」 #koudanclub_192605

【データ】

初出: 『講談倶楽部』 ■巻■号 大正15年5月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『大衆文芸名作集』(双華社・大正15年6月10日発行)
 『大衆文芸傑作選集』(至玄社・大正15年6月15日発行)
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)

【翻刻テキスト】 → 「三つの証拠」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「桐の花」 #shinseinen_192605_01

【データ】

初出: 『新青年』 ■巻■号 大正15年5月号 182ページ〜187ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二
備考: タイトルに(小品)とあり、末尾に「森下大兄」で始まる作品の不備を詫びた文面を添える。

 春雄と千恵子は恋人同士。そろそろ二人の恋愛遊戯も単調になり始めたある日の事――。春雄が千恵子に送った長い長い絶交の手紙。実は手紙の最後に「という創作を読みました」と書いた悪戯だったのだが、それを受け取った千恵子からは何の返事も来ない。まさか内容を真に受けて最後まで読んでくれなかったのでは、と気が気でない春雄だが、折悪しくインフルエンザで高熱を出して寝込んでしまい、彼女に会いに行く事も出来ない。 そして一週間が過ぎ、待ちかねていた彼女からの返事が書留郵便で届いた。中には恐ろしく長い手紙と色褪せた桐の花が一つ。「桐――縁切り」の連想が春雄の脳裏に閃く。そして手紙には彼女の実家が多額の借金を抱えてしまい、彼女は自分の身を犠牲にして、ある実業家の許へ嫁ぐ事になった旨が書かれていた。春雄は逆上し、千恵子と心中するつもりで手近にあった小刀を掴むと、部屋を飛び出して行った……。
 ここに書かれたような恋愛遊戯の形が新しいのやら古いのやら、ちょっと判断がつきかねる。今読めば言うまでもなく古いというか、その意味で微笑ましくもあるのだが。本作あたりから不木の作風にコント的な流れのものが加わるようになり、逆に医学的グロテスクに立脚した作風は殆ど目立たなくなる。特筆すべきは本作発表時、不木はこれを「探偵小説」として発表したくなかった、という事。初出時には「新青年」編集部宛のお詫びのコメントが作品と同時に掲載されており、後年平凡社から出た作品集に本作は収録されなかった。不木の考えていた「探偵小説」ジャンル論や、その意味で、当時のいわゆる「探偵趣味」概念を考える上で参考に出来る作品である。

【同時代評・関連資料その他】
 「マイクロフオン」片岡鐵兵(『新青年』大正15年7月号)
 「マイクロフオン」甲賀三郎(『新青年』大正15年7月号)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『新青年叢書3 小酒井不木傑作選集』(博文館・昭和4年6月18日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)

【翻刻テキスト】 → 「桐の花」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「深山の桜」 #shinseinen_192605_02

【データ】

初出: 『新青年』 ■巻■号 大正15年5月号 160ページ〜161ページ
署名: 小酒井不木
章題: なし
挿画: なし
備考: 「童話」の角書き。

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 単行本未収録

【翻刻テキスト】 → 「深山の桜」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「死の接吻」 #taishuubungei_192605

【データ】

初出: 『大衆文芸』 第1巻第5号 5月1日発行 2ページ〜■ページ
署名: 小酒井不木
挿画: 大澤鉦一郎
備考:  

【同時代評・関連資料その他】
 「大衆文芸往来」四谷・福富生(『大衆文芸』大正15年8月号)
 「大衆文芸往来」大阪市・布井勝彦生(『大衆文芸』大正15年9月号)
 「大衆文芸往来」芙蓉(『大衆文芸』大正15年9月号)
 「解剖台上のロマンチシズム=小酒井不木論」権田萬治(『幻影城』昭和50年2月号)

【収録書名】
 『探偵名作叢書第一集 死の接吻』(聚英閣・大正15年5月25日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『日本小説文庫416 展望塔の死美人』(春陽堂・昭和11年10月30日発行)
 『探偵小説傑作集5 死の接吻』(三佯社・昭和22年4月30日発行)
 『妖奇』昭和25年1月号
 『幻影城』昭和50年2月号
 『人工心臓』(国書刊行会・平成6年9月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「死の接吻」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「十円紙幣」 #nipponshounen_192605

【データ】

初出: 『日本少年』 ■巻■号 大正15年5月号 62〜66ページ
署名: 医学博士 小酒井不木
章題: 一/二
挿画: 小林永二郎
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『少年冒険小説全集第三巻 少年科学探偵集』(平凡社・昭和5年6月12日発行)
 『小酒井不木全集 第十五巻 闘病余録及断片』(改造社・昭和5年8月18日発行)

【翻刻テキスト】 → 「十円紙幣」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「新聞紙の包」 #kuraku_192606

【データ】

初出: 『苦楽』 6月号 第5巻第6号 大正15年6月1日発行 134ページ〜143ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二
挿画: 山六郎
備考: 角書き「探偵瑣談」。

 

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「新聞紙の包」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「印象」 #shinseinen_192606

【データ】

初出: 『新青年』 ■巻■号 大正15年6月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

「女子の復讐心」をテーマに語り合う倶楽部のメンバー達。女の執念深さについて、産婦人科のW医師は自分の経験談を話し始めた……。医師は妊娠九ヶ月の身重で肺結核を患い、衰弱しきっていたT外交官夫人を診察し、彼女に人工早産の手術を受ける事を勧めたが、夫人は頑として応じようとしない。妊娠が判った頃に結核に罹ってしまったのだが、どうしても子供を産みたかったので中絶せずにここまで来たのだという。夫人は、自分は死んでも構わないのでお腹の子供だけは死なせないで欲しい、と医師に歎願する。病に罹った自分を見捨てて放蕩の限りを尽くす夫への復讐の為に、自分は子供を無事に産んで残すのだという夫人は、実家に伝わる鬼の絵を朝から晩まで絶えず眺め続けていた。母体が受けた視覚的印象が胎児に伝わる例は外国にも数多くある、自分は鬼の絵を眺め、青い肌の、鬼の如き恐ろしい姿の赤ん坊を産み落として見せる、と夫人は言う。そして出産の日、W医師を呼び寄せた夫人は無事に女児を出産すると、力尽きて息を引き取った。その赤ん坊は――。
 視覚刺激による胎児の姿形の変貌、というテーマはのちにユーモアの衣をまとい傑作「赦罪」に結実する。本作では非合理的な呪いによる復讐を否定する事で、結果合理的な夫人の復讐の図式が浮上する構成となっており、実にスマートで美しい効果を上げている。(2007.3.19記)

【同時代評・関連資料その他】
 「読後の感」牧逸馬(『新青年』大正15年7月号)
 「マイクロフオン」梅原北明(『新青年』大正15年7月号)
 「マイクロフオン」田中早苗(『新青年』大正15年7月号)
 「マイクロフオン」甲賀三郎(『新青年』大正15年7月号)
 「マイクロフオン」大下宇陀児(『新青年』大正15年7月号)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『創作探偵小説選集 一九二六年版』(春陽堂・昭和2年2月)
 
『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『新青年叢書3 小酒井不木傑作選集』(博文館・昭和4年6月18日発行)
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『明治大正文学全集56』(春陽堂・昭和6年8月15日発行)
 『闘争』(春秋社・昭和10年10月5日発行)
 『復刻 創作探偵小説選集第2輯(1926年版)』(春陽堂・平成6年)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『幻の探偵雑誌10 「新青年」傑作選』(光文社・平成14年2月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「印象」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「血の盃」 #gendai_192607

【データ】

初出: 『現代』 ■巻■号 大正15年7月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「血の盃」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「躓く探偵」 #koudanclub_192607

【データ】

初出: 『講談倶楽部』 ■巻■号 大正15年7月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『探偵小説全集2 小酒井不木集』(春陽堂・昭和4年10月8日発行)
 『小酒井不木全集 第十七巻 探偵小説中篇集』(改造社・昭和5年10月10日発行)

【翻刻テキスト】 → 「躓く探偵」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「紫外線(一)」 #kodomonokagaku_192607

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年7月号 ■〜■ページ 連載第1回(全3回)
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】
 「小酒井不木の児童文学 ―〈少年科学探偵〉シリーズを中心に―」上田信道(『国際児童文学館紀要 第11号』大阪国際児童文学館・1996.3.31)

【収録書名】
 『少年科学探偵(不木少年科学探偵集 第一編)』(文苑閣・大正15年12月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『少年冒険小説全集第三巻 少年科学探偵集』(平凡社・昭和5年6月12日発行)
 『少年文庫152 少年科学探偵』(春陽堂・昭和7年12月25日発行)
 『紅色ダイヤ』(平凡社・昭和21年4月20日発行)
 『紅色ダイヤ』(世界社・昭和23年6月10日発行)
 『少年小説大系7 少年探偵小説集』(三一書房・昭和61年6月30日発行)
 『小酒井不木探偵小説選』(論創社・平成16年7月25日発行)
 『少年科学探偵』(真珠書院・平成25年8月10日発行)

【翻刻テキスト】 → 「紫外線(一)」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「卒倒」 #shinseinen_192607

【データ】

初出: 『卒倒』 ■巻■号 大正15年7月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

 女学校の英語教師、武藤ひろ子女史は英語は達者だが非常に意地が悪い。新しく雇われた英語教師の吉村清子は女学校を出たばかりの美貌の持ち主で、校長は彼女を気に入り早速一年級と四年級の英語を受け持たせたが、これが武藤女史の逆鱗に触れた。彼女は吉村女史を憎み、彼女を苦しめるようになる。夏になり、シカゴの女学校校長ジェファーソン氏が来校し、講演をしてくれる事になったので、校長は二人の英語教師を呼び、どちらかに講演の通訳を頼んだ。武藤女史は急に、郷里の母が急病でその日は休むから、と吉村教諭を推薦する。小心でキャリアも浅い吉村教諭が驚いて言葉を失っている間に、校長は彼女を通訳に決めてしまった。通訳が出来る自信もなく、かといって辞退するのも武藤女史のいじめに屈服する事になり癪にさわる、煩悶した挙げ句、武藤女史の不在だけが救いと開き直って、吉村女史は当日を迎えた。緊張で青ざめた吉村女史がジェファーソン氏に続いて演壇に登る。と、その時講堂に一人の婦人が入って来た――武藤女史である。それを見てショックを受けた吉村女史は、その場に卒倒してしまった……。
 四十過ぎの独身の女教師で意地悪、依怙贔屓、醜女。女学校を出たての女教師は美貌で気弱。悪役も苛められ役もキャラクタ造形はスタンダードというか、コントの為の筋運び専用。逆転の結末が綺麗に決まって話は面白いのだが、物語全体の印象としてはちと迫力不足のような。

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『新青年叢書3 小酒井不木傑作選集』(博文館・昭和4年6月18日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)

【翻刻テキスト】 → 「卒倒」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「狂女と犬」 #taishuubungei_192607

【データ】

初出: 『大衆文芸』 第1巻第7号 7月1日発行 2ページ〜■ページ
署名: 小酒井不木
挿画: 大澤鉦一郎
備考:  

 寝たきりの父と二人で暮らすお蝶さんという美しい娘がいた。村の人々は誰も近付かず、父が亡くなり、悲嘆のあまり精神に異常を来したお蝶さんは、愛犬の白だけを友として孤独に暮らしていた。そんなお蝶さんを五人の無頼漢が襲う。暴行され、誰のものとも知れぬ胤を宿してしまったお蝶さんは暫くして男の子を産んだ。飼い犬の白は利口な犬で、村にやって来てはお蝶さんの為に食べ物を恵んでもらい、それを運んでいたのだが、それに目をつけた無頼漢達は、白の運んでいる食べ物を横取りするようになった。ある日、馬肉を運んでいた小僧を襲った無頼漢達は、小僧が逃げていった先から白が肉をくわえてやって来るのに遭遇した。彼らは白を追い払い、手に入れた肉を鍋にして酒宴を張ったのだが……。不幸なお蝶さんの為に復讐を遂げた賢い犬の物語だが、これには後日談がつく。一月後、お蝶さんの家から出火し、お蝶さんと赤ん坊、飼い犬の白は焼け死んでしまう。三つの死体を寺の墓地に葬った村人達は、時折墓の中から聞こえてくる子守唄を耳にするのだった……。
 旅先でロマンスを求める「私」が遭遇した悲しい物語。「私」はお蝶さんの身の上に深く感じ入り、旅の目的は果たされたと感慨に耽る、という設定。ホラーというよりは古典的な因縁話。この話は実話が元ネタで不木は別の機会にエッセイにも書いている。

【同時代評・関連資料その他】
 「大衆文芸往来」岡崎・犬塚生(『大衆文芸』大正15年9月号)
 「胎盤を喰ふ話其他」小酒井不木(『新青年』大正15年10月号)

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「狂女と犬」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「猫と村正」 #weeklyasahi_192607ex

【データ】

初出: 『週刊朝日』 ■巻■号 大正15年7月特別号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

 容貌の醜い妻が不満で、余所に女を囲う株式仲買人の辻。嫉妬に狂った妻は家に代々伝わる村正の刀で頸をかき切り自殺を遂げた。辻は愛人を後妻に迎えたが、彼女は前妻の飼っていた三毛猫が自分達を凝視するまなざしに恐れを抱く。それから後妻は眼病を患い、彼女の目は猫の様に闇夜で光るようになってしまった。それはグリオームという悪性腫瘍の症状の一つだったが、辻には猫の祟りのように思われてならない。しかも後妻は治療の遅れから脳膜炎を併発して死亡してしまう。妻が死んだ当日、それまで姿を見せなかった三毛が庭に現れた。辻は村正の刀を掴むと庭に飛び出し、三毛めがけて斬りつけたのだが……。
 母危篤の報せに列車に飛び乗った「私」の向かいに座る男は、妻の遺骨を抱いて郷里へ戻るのだと言い、妻の死と同時に失った自らの右目と左足にまつわる因縁話を聞かせる。平素迷信など気にしない「私」が遭遇した母危篤の報と、「魔の列車」と呼ばれる汽車、そこで出会った男の奇妙な因縁話――物語は「私」の母が脳溢血で遂に一度も意識を恢復せず死亡したところで終わり、男から聞いた恐ろしい怪談は母の死の前兆と受け取られる。最後まで近代的論理は浮上せず、奇怪な呪いの因果律が世界を支配する。化け猫や呪いの刀は講談物の定番素材。一方で近代医学を素材とする探偵小説を書きながら、こうした講談式因縁話も拘りなく書いてしまうところが実に小酒井不木。

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『小酒井不木全集 第十六巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年9月15日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「猫と村正」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「偶然の成功」 #kuraku_192608

【データ】

初出: 『苦楽』 8月号 第5巻第8号 大正15年8月1日発行 84ページ〜93ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二/三
挿画: 山六郎
備考: 角書き「探偵瑣談」。

 

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『探偵小説全集2 小酒井不木集』(春陽堂・昭和4年10月8日発行)
 『小酒井不木全集 第十六巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年9月15日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「偶然の成功」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「紫外線(二)」 #kodomonokagaku_192608

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年8月号 ■〜■ページ 連載第2回(全3回)
署名:
章題:
挿画:
備考:  


 (「紫外線(一)」を参照

【同時代評・関連資料その他】
 (「紫外線(一)」を参照

【収録書名】
 (「紫外線(一)」を参照

【翻刻テキスト】 → 「紫外線(二)」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「愚人の毒」 #kaizou_192609

【データ】

初出: 『改造』 秋季特大号■巻■号 大正15年9月1日発行 50ページ〜64ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二/三/四
備考:  

「恋愛曲線」「人工心臓」と並び、単行本収録回数の比較的多い作品。その理由は、戦前にしては珍しく出来の良い〈本格〉短編である事に尽きる。
 三回もの発作的な発熱・嘔吐・下痢に襲われ、四回目の発作で死亡した奥田未亡人の不可解な死。それは亜砒酸を使った毒殺だったのか? 養子である長男健吉と現在勘当状態の次男保一の二人には、夫人の死によって利益を得る理由が確かに存在する。二人の当日の行動を詳細に確認しながら、津村検事は未亡人の主治医であった山本医師の証言に有力な証拠を見出す……。
 短いながらこれは一流の〈本格〉探偵小説である。事件の輪郭は初めにしっかりと固められており、少ない登場人物の中から犯人を割り出す、というだけのシンプルな展開。無駄なく真犯人を追い詰めて行く展開の論理性にも言うこと無し。「愚人の毒」(Fool's Poison)とは亜砒酸の呼称。症状から見極めやすく、死体に残留して発見されやすい毒、という事でついた呼び名だが、結末がまた非常に上手くこの呼称と絡めて解釈出来るので、その点でもお見事。大拍手だ。

【同時代評・関連資料その他】
 「九月の雑誌から」材木町人(『騒人』大正15年10月号)
 「解説」中島河太郎(『日本探偵小説全集1 黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集』東京創元社・昭和59年12月)
 「解説」中島河太郎(『くらしっくミステリーワールド6 小酒井不木集』リブリオ出版・1997年2月)
 『ポピュラー・サイエンス53 ミステリーと化学』今村壽明/山崎 昶共著(裳華房・1991年6月)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『探偵小説全集2 小酒井不木集』(春陽堂・昭和4年10月8日発行)
 『明治大正文学全集56』(春陽堂・昭和6年8月15日発行)
 『日本小説文庫415 大雷雨夜の殺人』(春陽堂・昭和11年11月5日発行)
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)
 『日本探偵小説全集1 黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎集』(東京創元社・昭和59年12月21日発行)
 『大雷雨夜の殺人』(春陽堂書店・平成7年2月25日発行)
 『小酒井不木集』(リブリオ出版・平成9年2月28日発行)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『小酒井不木作品集1』(本屋さん・平成12年12月)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「愚人の毒」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「紅蜘蛛の怪異」 #king_192609

【データ】

初出: 『キング』 第2巻第9号 大正15年9月1日発行 40ページ〜52ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二/三/四
挿画: 山川秀峰
備考: 角書き「探偵奇譚」。

【同時代評・関連資料その他】
 「紅蜘蛛の怪異」(『叢書新青年 小酒井不木』博文館新社・平成6年4月)

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『闘争』(春秋社・昭和10年10月5日発行)
 『叢書新青年 小酒井不木』(博文館新社・平成6年4月25日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「紅蜘蛛の怪異」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「紫外線(三)」 #kodomonokagaku_192609

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年9月号 ■〜■ページ 連載第3回(全3回)
署名:
章題:
挿画:
備考:  


 (「紫外線(一)」を参照

【同時代評・関連資料その他】
 (「紫外線(一)」を参照

【収録書名】
 (「紫外線(一)」を参照

【翻刻テキスト】 → 「紫外線(三)」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「メヂユーサの首」 #taishuubungei_192609

【データ】

初出: 『大衆文芸』 第1巻第9号 9月1日発行 32ページ〜■ページ
署名: 小酒井不木
挿画: 大澤鉦一郎
備考:  

 かつて医者だったという老紳士は語る。彼の許に大きなお腹を抱えた二十七八の娘がやって来た。彼女は重度の肝硬変で腹水が溜まり、腹壁の静脈が浮き上がって俗に言う「メヂューサの首」の状態になっていた。診断を聞いた娘は「私のお腹には怪物が宿っている」と言い出し、彼女が怪物を孕んだといういきさつを話し始めた。……一年前温泉宿でギリシャ神話の本を読んでいる内に眠ってしまい、メヂューサの首が自分の腹に飛び込んで来る夢を見た。目を覚ますと何と墨で自分の腹にメヂューサの首の絵が描かれている。どうやらそれは誰かが自分に麻酔薬を飲ませ、悪戯したものらしかった。しかしそれから暫くして生理が止まり、腹が段々と膨れてきた。ナルシストである自分にはこれ以上自分の容色がメヂューサに犯されてゆく事は耐えられない。先生には手術でメヂューサの首を取り出してもらいたい……。しかし衰弱しきっていた娘は手術に耐えられず亡くなった。娘が火葬される様子を眺めた医師は、娘の遺体を包む炎が無数の蛇に見え、メヂューサの頭が自分にのしかかってくる幻覚を見て卒倒した……。
 温泉宿で若い医学生と看護婦との悪ふざけを目撃した老紳士はかつての自分がしでかした行為を告白し、それがもたらしたかもしれない悲劇を語る。偶然か、超自然の怪異か。「近代医学」に詳しい「探偵小説」作家が投げる球としては極めて奇妙なコースに決まる一球といえよう。

【同時代評・関連資料その他】
 「九月の雑誌から」材木町人(『騒人』大正15年10月号)
 「大衆文芸往来」紊堂庵(『大衆文芸』大正15年11月号)
 「大衆文芸往来」紫芙蓉(『大衆文芸』大正15年11月号)
 「大衆文芸往来」兵庫・小酒井史郎(『大衆文芸』大正15年11月号)

【収録書名】
 『創作探偵小説集5 恋愛曲線』(春陽堂・大正15年11月13日発行)
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『小酒井不木全集 第三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和4年5月25日発行)
 『日本小説文庫415 大雷雨夜の殺人』(春陽堂・昭和11年11月5日発行)
 『妖奇』昭和23年1月号
 『小説推理』昭和49年8月臨時増刊号
 『闇×幻想13=黎明 13人の作家による劇的空間』(ペンギンカンパニー・平成5年7月)
 『人工心臓』(国書刊行会・平成6年9月20日発行)
 『大雷雨夜の殺人』(春陽堂書店・平成7年2月25日発行)
 『現代ホラー傑作選6 奇妙な味の菜館』(角川書店・平成8年)
 『恋愛曲線 復刻版』(春陽堂書店・平成11年7月20日発行)
 『小酒井不木作品集1』(本屋さん・平成12年12月)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「メヂユーサの首」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「妲已の殺人」 #kuraku_192610

【データ】

初出: 『苦楽』 10月号 第5巻第10号 大正15年10月1日発行 82ページ〜90ページ
署名: 小酒井不木
章題: 一/二/三
挿画: 山六郎
備考: 角書き「探偵瑣談」。

 

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『小酒井不木全集 第十六巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年9月15日発行)
 『小酒井不木探偵小説選U』(論創社・平成29年11月30日発行)

【翻刻テキスト】 → 「妲已の殺人」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「汽車の切符」 #gendai_192610

【データ】

初出: 『現代』 ■巻■号 大正15年10月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】
 「解剖台上のロマンチシズム=小酒井不木論」権田萬治(『幻影城』昭和50年2月号)

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『鉄道ミステリー傑作選 見えない機関車』(光文社・昭和51年11月20日発行)
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)
 『鉄道ミステリー傑作選3 見えない機関車』(光文社・昭和61年10月20日発行)

【翻刻テキスト】 → 「汽車の切符」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「ひすゐの簪」 #koudanclub_192610

【データ】

初出: 『講談倶楽部』 ■巻■号 大正15年10月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『探偵小説全集2 小酒井不木集』(春陽堂・昭和4年10月8日発行)
 『小酒井不木全集 第十七巻 探偵小説中篇集』(改造社・昭和5年10月10日発行)

【翻刻テキスト】 → 「ひすゐの簪」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「不思議な煙」 #kodomonokagaku_192610

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年10月号 ■〜■ページ 連載第1回(中絶)
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『小酒井不木探偵小説選』(論創社・平成16年7月25日発行)

【翻刻テキスト】 → 「不思議な煙」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「新案探偵法」 #taishuubungei_192610

【データ】

初出: 『大衆文芸』 ■巻■号 大正15年10月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】
 「大衆文芸往来」和歌山・茂野篤雄(『大衆文芸』大正15年12月号)
 「解剖台上のロマンチシズム=小酒井不木論」権田萬治(『幻影城』昭和50年2月号)

【収録書名】
 『稀有の犯罪』(大日本雄弁会講談社・昭和2年6月18日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『別冊・幻影城No.16 小酒井不木』(幻影城・昭和53年3月1日発行)
 『人工心臓』(国書刊行会・平成6年9月20日発行)
 『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線』(筑摩書房・平成14年2月6日発行)

【翻刻テキスト】 → 「新案探偵法」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「劇場の事変」 #koudanclub_192611

【データ】

初出: 『講談倶楽部』 ■巻■号 大正15年11月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『日本探偵小説全集第一篇 小酒井不木集』(改造社・昭和5年3月20日発行)
 『小酒井不木全集 第十六巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年9月15日発行)

【翻刻テキスト】 → 「劇場の事変」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「肖像の怪」 #nipponshounen_192611

【データ】

初出: 『日本少年』 ■巻■号 大正15年11月号 ■〜■ページ
署名:
章題:
挿画:
備考:  

【同時代評・関連資料その他】

【収録書名】
 『少年冒険小説全集第三巻 少年科学探偵集』(平凡社・昭和5年6月12日発行)
 『小酒井不木全集 第十五巻 闘病余録及断片』(改造社・昭和5年8月18日発行)

【翻刻テキスト】 → 「肖像の怪」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」

「塵埃は語る(一)」 #kodomonokagaku_192612

【データ】

初出: 『子供の科学』 ■巻■号 大正15年12月号 ■〜■ページ 連載第1回(全3回)
署名:
章題:
挿画:
改題: →「ほこりは語る」
備考:  

【同時代評・関連資料その他】
 「小酒井不木の児童文学 ―〈少年科学探偵〉シリーズを中心に―」上田信道(『国際児童文学館紀要 第11号』大阪国際児童文学館・1996.3.31)

【収録書名】
 『現代大衆文学全集第七巻 疑問の黒枠外三十一篇』(平凡社・昭和3年3月1日発行)
 『探偵小説全集2 小酒井不木集』(春陽堂・昭和4年10月8日発行)
 『小酒井不木全集 第十三巻 探偵小説短篇集』(改造社・昭和5年6月15日発行)
 『少年冒険小説全集第三巻 少年科学探偵集』(平凡社・昭和5年6月12日発行)
 『少年文庫152 少年科学探偵』(春陽堂・昭和7年12月25日発行)
 『紅色ダイヤ』(平凡社・昭和21年4月20日発行)
 『紅色ダイヤ』(世界社・昭和23年6月10日発行)
 『少年少女世界の名作文学48 日本編4』(小学館・昭和42年1月20日発行)
 『少年小説大系7 少年探偵小説集』(三一書房・昭和61年6月30日発行)
 『小酒井不木探偵小説選』(論創社・平成16年7月25日発行)
 『少年科学探偵』(真珠書院・平成25年8月10日発行)

【翻刻テキスト】 → 「塵埃は語る(一)」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(小説の部)」