参考文献/資料集 1926(大正15)年

(公開:2007年2月13日 最終更新:2017年11月10日)
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1月

(マイクロ・フオン) / 春日野緑

『新青年』 1月号

 殺伐なもの、余りに怪奇的なものはイヤだ、それよりはごく市井にありふれた事件を材料にして、スバラしいウヰツトを働かせた諧謔的なものを私は望む。波瀾重畳といつた風のものよりは、読んでしまつてニヤリと笑ふくらゐのもので私は結構である。しかしさうした作品に接するのは割合に少いのではないか。いはゆるこの種の「探偵小品」と名づくべきものを挙げるなら、最近では小酒井博士の「遺伝」「虚実の証拠」などであらう。

(マイクロ・フオン)空想的犯罪生活 / 水谷準

『新青年』 1月号

 末梢神経の上だけでなく、空想的犯罪生活に、もつと浸り切らねばならぬのが、日本探偵小説家の急務らしく思はれてなりません。材料や筆が劣つてゐるのではなく、この犯罪生活をやつて見ない不精があるからではないでせうか。小酒井博士が有余る材料を、空想的犯罪生活の中に愛用してはゐない様な無精さがある、とは云へませんか。さうして見れば江戸川氏の傑作が切に待たれます。少なくも氏は、空想的犯罪生活者であるやうに思へますので。作者は神の如くに、犯罪者の生活も、探偵の生活も愛さなくてはならない。とは云へないでせうか。

(マイクロ・フオン)短感録 / 吠南虞

『新青年』 1月号

◆「近頃読んだもの」に、非常に期待してゐる、どしどし新らしい外国の作品を紹介して戴きたい、小酒井氏等に感謝する次第である。

編輯後記

『大衆文芸』 1月号

□今までに判明した次号の創作は左記の如くであるが、更に次号からは同人各自の異つた面白い雑録が掲載される。(十一月廿二日池内生)
 記憶抹殺法…………小酒井不木
 日清戦争の巻(唐人船第二)…………平山蘆江
 去来三代記…………直木三十三
 二天記新解…………國枝史郎
 奇妙な対面…………江戸川亂歩
 お梅…………正木不如丘
 老雑兵物語…………長谷川伸
 風流試胆会…………本山荻舟
 江戸から東京え…………矢田挿雲

作家未来記 / 探偵局大正二十年調査

『探偵趣味』 1月号

参照: 翻刻テキスト:「作家未来記」

古川柳染 / 燕家艶笑

『探偵趣味』 1月号

   小酒井博士の探偵小説の種はお手のものゝ医学知識から湧いて来ること泉のごとしとのこと

□汐汲みに所望の波が打つて来る

第三輯を取り上げて / 甲賀三郎

『探偵趣味』 1月号

(前略)探偵小説を芸術としての第一義たらしめる為めには、江戸川乱歩氏を陣頭に立てて、小酒井不木氏後陣を承り若武者の勢揃ひ勇しく乗り出してゐる。(中略)
 編輯当番の不木氏、趣味欄を狂言で逃げたのは之亦ずるい。息抜きの積だらうが、氏にはもつと面白い息抜き話がある筈だ。期待に背いたのは申訳けない。(不木氏の代弁)

うめ草 / 本田緒生

『探偵趣味』 1月号

   ○
 ヘンテコな話しを作り出す人に江戸川氏以上の小酒井博士。
 曰く「人工心臓」
 曰く「恋愛曲線」
 曰く「胎児の養育」
 但し、決して一作毎に頭髪は、薄くならないから御心配は御無用。
   ○
 全く「恋愛曲線」で、切り取られた心臓が独りで動く所から、毒物に依つて違つた曲線を得る所、感情に依る曲線の所 最後に恋愛の曲線。どこ迄が本当で、どこ迄が作り事なのか、まるで分らない。
 痛快な話の一つ。

年頭独語集 / 湊川の狸

『探偵趣味』 1月号

小酒井不木――乱歩君も可哀さうだ。あんなに頭を問題にされちや、やり切れないだらう。一つ今年は、わしも探偵小説の方は止しにして、彼のために毛生薬を造るべく努力してやらうかな。

趣味倶楽部上映

『探偵趣味』 1月号

   探偵キネマ会社作品
   本年度超特作映画

   文部省推薦教育映画
   医学宣伝学術怪奇劇
『踊る三角形の心臓』小酒井不木博士実演

サンデー談話室

『サンデー毎日』 1月17日号

◇外国の探偵小説
 我探偵小説界の明星、江戸川乱歩氏の作品を掲載されましたことを感謝致します。けれど慾をいひますなら、外国の探偵小説ものせて欲しいのです。スエーデンの作家ドウーゼの長編をでも、小酒井博士に訳して戴いて、連載して下さるなら編輯者に絶大の感謝を捧げます。(京都 ゆき子)

不木と不如丘との鑑別診断 / 正木不如丘

『読売新聞』 1月25日
 → 『正木不如丘探偵小説選T』 論創社 2012年10月10日発行

 (前略)
 この一例は不木と不如丘との鑑別診断がいかに困難であるかを雄弁に物語るものである。不木と不如丘との鑑別は初学者にとってもまた相当に経験ある者にも困難であるらしい。この鑑別診断は丁度胸部に来る肋間神経痛と筋肉リュウマチスとの鑑別のように六ケ敷いのである。

『正木不如丘探偵小説選T』(論創社・2012年10月10日発行)より引用。

2月

(マイクロフォン)横槍一本 / KOGA

『新青年』 2月号

 「手術」に声名を得た小酒井氏の「痴人の復讐」は遺憾ながら頂戴出来ません。復讐の為めに患者の健眼をくり抜かせて、手術者を自殺さし、一石に二鳥を得ると云ふのですが、只空恐しい事と云ふ感より外はありません。主人公が大それた事を何の自責の感なしペラヽヽと述べてゐるのも不愉快です。主人公の心理にもう少し煩悶はなかつたのでせうか。異常精神と云へばそれ迄ですが、それならそれで、始めからトリックなど隠さずに、患者の健眼にズブリとメスが這入つた時の悪魔的快感の描写がして欲しかつたと思ひます。最後の意外さを保つ為めに、トリックを隠したは、戦慄と意外との二つの功果を追つて、遂に一つを得なかつたものと思ひます。

(マイクロフォン) / 国枝史郎

『新青年』 2月号

 啓蒙的描写論、さういふ物だつて必要である。一作に就ての解剖的批評。さういふ物だつて必要ではある。しかし小酒井不木氏とか松本泰氏、江戸川亂歩氏、横溝正史氏、アーサー・リーヴ・チェスタトン・ビーストン・ウェルシーニンといふやうな、代表的作家の人物批評は、是又大いに必要である以上挙げた日本の作者等は(勿論その他にも著名な人はあるが)人物評論をされても可い程、探偵小説界では働いてゐる。どうだらう誰か此方面に、鍬を打ち込む者は無いか。作品を通して作者を見る――作者を通して作品を見る。これは両々ともなふ可きものだ。それにもかゝはらず今日迄、よい作者論が出てゐない。いさゝか不満の点である。

(マイクロフォン)◆モノローグ / 九頭龍之介

『新青年』 2月号

 妹尾氏の「十時」は、平凡な作だつた。何だか、ドイルとルブラン物をごつちやにした様な感じがした。小酒井氏「痴人の復讐」、創作物三つの中で一番いゝ、無駄がなく、きびきびしてゐて一気に読まされる。但し、序文の「殺人倶楽部――」の一節は無くてもがな。

猫の戯れ跡

『探偵趣味』 2月号

 ◎命名のこと
 我輩はその姓、カトーを文字つて夏冬をペンネームとしてゐる。此の調子でカトーシゲヲを河東茂生として用ゐて来た。そして之を小酒井先生の所へも書いて送つたことゝ思ふ。博士は之をシゲル生とでも読まれたものか? 印刷されたのを見ると「生」の一字が消えてなくなつてゐる。まさかカトーシゲといふ男は居ないだらう。(中略)
 ◎髭
 星野龍猪氏が何故髭を剃つたか? について我々のグループが話し会つてゐた。
「変に気を廻しては困る…」一体何のことだ。エ?
「ハナクソを採掘するのに都合が悪いんだ。」汚い事をいふ奴が居る。小酒井先生の様に下品だつて、サンモン――説教のことだ――が見舞ふぞ。考へた挙句に斯う決議した。
「汁粉を食ふのに邪魔になるのだ。」

テーマ大売出し / 巨勢洵一郎

『探偵趣味』 2月号

(前略)小酒井さんになると、沢山の材料が頭の箪笥にキチンと蔵つてあつて、今度の小説はあの抽斗から出さうか、之れにしようかと言つた形、処が蔵つてあるものを一つゝゝ選り出される丈けに、態度が少々ヴイツセンシヤフト過ぎて(何も知つたか振りに独逸語を振りまはすわけではないのです、私共の仲に、そんなヴイツセンシヤフトな事をいふなよ、といふ言葉が有る)小説よりも学術報告になりたがる。(後略)

探偵趣味

『探偵趣味』 2月号

不木氏のものは総体に面白味と云ふ点は稀薄である。

秘密室 / オールドボーイ

『探偵趣味』 2月号

◇探偵小説最近の凝り方はどうだ。何も無理に探偵小説を芸術にしなくともいゝぢやないか。不木の「手術」「痴人の復讐」などは今思ひ出しても胸が悪くなる。俺は胸を悪くしたり、肩を凝らしたりする為めに探偵小説を読むんぢあないから、今少し素直な上品なものを願ひたい。最近新青年に連載せられた、ブルドツグドラモンドのやうなものを。

同人動静

『探偵趣味』 2月号

小酒井不木氏 近来正木不如丘氏と混同せられる事が多いので、読売紙上にその同一人ならざる事を大々的に書いた。

探偵小説と神秘小説 / 千葉亀雄

『新青年』 2月増刊号

 其後自分は仙台に出てから、書生をして居る家に漢書が大分あつた。其の中に『聴訟彙案』(?)があるのを発見して、こんどは、支那の探偵小説に別様の興味を覚えた。尤もそれは探偵小説と云つても、小酒井博士がよく挙げられるやうな裁判官の機智や第六官(ママ)で、犯罪をうまくあばき出した実例?を集めたもので、支那の原本を徳川時代に翻刻したものだ。恐らく、川路、遠山など云ふ、講談中の名裁判官の参考書であつたかも知れない。

 小酒井博士の、北欧ものなどになると、やはり北欧らしい気分が味はれる。自分が近頃読んで居るのは、フランク・ヘルレルと、スヴェン・エルヴェスタッドの探偵小説である。

探偵小説壇の諸傾向 / 平林初之輔

『新青年』 2月増刊号
→『平林初之輔探偵小説選2』 論創社 2003年11月10日発行

(前略)小酒井不木氏の作品は、私は、本誌〔『新青年』〕に出たものは全部よんでおるが、本誌以外に発表されたものは一つも読んでいない。しかしきくところによると、本誌に発表されたものは、氏の最も会心の作だということである。してみれば、本誌に出た作品だけをもとにして、探偵小説家としての氏を論ずるのは、氏の欠点を見逃すおそれはあっても、氏の長所を見逃すことにはなるまいと思う。
 氏の作品は、ほとんど正確に、発表の月と比例して、あとから出たもの程よくなっているように私は思う。したがっていちばん私が感心してよんだのは、新年号に出た「恋愛曲線」である。人間をも含む動物の器官が、適当なコンディションさえ与えれば、身体じゅうの本来の位置から取りはずしても、機能を営みつづけてゆくということは、他の書物でも読んだことがある。
 この実験生理学の真理の上に、氏は驚くべきロマンスを組みたてた。失恋した女の心臓へ失恋した男の血液を送って負と負との積は正になるという理屈から、この組み合わせの心臓の鼓膊が「恋愛曲線」を描くというもっともらしい結論をつくりあげ、それを、共通の「恋仇」の結婚の日の贈り物としようとする趣向である。しかしそれは、恋を失った二人の生命をもってつくられる贈り物なのである。
「しかし僕は、その曲線を現像することはできない。何となれば、僕はこのまま、僕の全身の血液を注ぎ尽くすつもりだから」というところまで読むと、我知らずはっとさせられる。それは「手術」の胎児を食う場面や、「痴人の復讐」の誤って健全な眼をくりぬくところなどと同じ味わいであるが、なかんずく、「恋愛曲線」の最後のところが、一種のエクスタシーの境地に達しており、したがって、以上三つの中で、この作を最もすぐれたものたらしめているように私は思う。
「虚実の証拠」「遺伝」等の価値については世評半ばしていたようであるが、私は、ネガティブの一票を投じる。
 題材や表現のしかたなどはちがっているが氏の小説にも、江戸川乱歩氏の小説にと同じ危機が迫ってきそうに私には思われる。それは精神病理学的興味の追求にあまりに急である点である。

『平林初之輔探偵小説選2』(論創社・2003年11月10日発行)より引用。

編輯局から / 森下雨村

『新青年』 2月増刊号

◆そして今日、この探偵小説時代の出現を見るに至つた経路をふりかへつて見る時、そこにはいろゝゝの素因があるであらうが、長い間探偵小説壇の主流を通つて来た本誌を中心にしてのみ考ふれば、私は小酒井博士、江戸川乱歩の両氏及び田中、延原、妹尾の三君を中心とする翻訳家の諸氏に、その功績の全部を均分して頒ちたいと思ふ。
◆小酒井兄の犯罪文学の研究と発表、江戸川兄の傑出したる創作の発表、この両者の功績に対してあらん限りの讃辞を呈するに何人と雖も異論はあるまい。(以下略)

『趣味の探偵談』広告

『新青年』 2月増刊号

参照: 書評・新刊案内『趣味の探偵談』

二月文壇評(七)芸術か大衆か通俗か(上) / 橋爪健

『読売新聞』 2月6日 4面

今月も私は月評家として多くの文壇小説を読まされたが、お役目とは云ひながら批評すべき何らの価値のないものが非常に多いゝ。それよりも白井喬二氏の「金爛戦」の方がどんなに芸術的に人間生活の種々相に触れさせてくれたか、小酒井不木氏の「三つの痣」(大衆文芸)の方がどんなに深く人間心理の異常さを暴露してくれたか、また菊池寛氏の「受難華」(婦女界)や加藤武雄氏の「愛染草」(婦人倶楽部)の方がどんなに広く人情の機微を語つてくれたか。

二月文壇評(八)芸術か大衆か通俗か(下) / 橋爪健

『読売新聞』 2月9日 4面

今月の「新青年」に訳載されてゐるチエスタアトンの「孔雀の樹」(小酒井不木氏訳)を見てもすぐ感じたが外国のものは探偵小説にしろ歴史小説にしろ、一般的興味と同時に芸術的価値、人生的意義を持つてるものが多い。

3月

(マイクロフォン) / 国枝史郎

『新青年』 3月号

△小酒井不木氏の作では新青年の『恋愛曲線』大衆文芸の『人工心臓』を挙げる。いづれも悽愴酷烈である。さうして社会性を持つて居る。

(マイクロフォン)作品曲線 / 水谷準

『新青年』 3月号

 新年号の小酒井氏の御作は、氏の作品曲線中、最高の一点を占むべきものでありませう。

(マイクロフォン) / 西田政治

『新青年』 3月号

 不木博士の「恋愛曲線」と亂歩君の「踊る一寸法師」私はどちらも感心して読み了つた。そして不木博士の探偵小説と亂歩君の探偵小説との歩んでゐる道をハツキリ見せられたやうな気がした。医学博士と云ふ不木氏は自己の専門知識を利器として到底そこらの若輩が及びもつかぬ有利な立場に固く足を踏みしめてゐる。だからどことなく学者らしい固苦しさが脱けてゐない。亂歩君は自分の探偵小説を立派な文学的圏内にまで進み入れようと精進一心に創作してゐる。だからどことなく文学的(?)な歩みを確固と続けて居るやうだ。

(マイクロフォン) / 横溝正史

『新青年』 3月号

「手術」を読んだ時には沁々と敬服した。「痴人の復讐」を読んだ時にはハヽア又だなと思つた。「難題」を読んだ時にはおやゝゝと思つた。「恋愛曲線」ではあゝ又かとうんざりした。「人工心臓」は読む気にもなれない。これは作その物の良否ではなく、作に盛られた世界が、あまり自分とかけ離れてゐる為に誤魔化されてゐるやうな腹立たしさを感ずるのだ。小酒井さんの作品が、研究室を出ない限り、今後如何なる名作が出ようとも私には感心出来ないだらう。

(マイクロフォン) / 江戸川乱歩

『新青年』 3月号

「恋愛曲線」と「広告人形」が頭に残つてゐる。前者は最後の落ちの所で少し変な気がしたけれど、筋の異常さと、作に籠る熱と、リズミカルな文章とが、この上もなく私をひきつけた。後者は作者が二十四歳の青年だと知つてゐるので、その文章の大人らしに驚いた。落ちがあつけないといふ人があるけれど、私はあれでいゝと思ふ。作全体に何ともいへぬ変てこな味がある。ある意味に於て新年号第一の佳作だと信ずる。

(マイクロフォン) / 巨勢洵一郎

『新青年』 3月号

 新青年一月号に於て平林氏の「予審調書」小酒井氏の「恋愛曲線」倉田氏の「死刑執行人の死」谷氏の「サム・カゴシマ」に敬意を表し候。

(マイクロフォン) / 前田河広一郎

『新青年』 3月号

 探偵小説が旺んになるといふことは偏へに『新青年』や小酒井博士や江戸川亂歩君等の活動に与かることは云ふまでもないことですが、一体、かういふ読物を要求する時代の社会相を考へる必要が沁々と起ります。

(マイクロフォン) / 河口美致枝

『新青年』 3月号

 正直に云ふと新年号はあまり感心しませんでした。小酒井博士の作は化学書でも読んでる様でしたし、廣津氏のは駄作です。岡本さんの「三つの声」はいつか小酒井博士がいはれた藤陰比事の話を骨子にされたものでせうね。

(マイクロフォン) / 白石潔

『新青年』 3月号

 読者は常に第三者の立場に立つて批評と観察をする。新年号を手にして私は思はず快哉を叫んだ。欧米雑誌にも比を見ぬ充実ぶり。中にも小酒井氏の「恋愛曲線」を読んだ時かくの如き名作は欧米にも無いと思つた。

(マイクロフォン) / 本田緒生

『新青年』 3月号

 小酒井博士の「恋愛曲線」とてもすてきだ。一寸あれ程の物は外国にも見出されまい。小説家として又立派な腕を示された物だ。氏を有する事は日本探偵小説界の誇りだ。

大衆文芸往来 / 遠方・林三郎

『大衆文芸』 3月号

「人工心臓」はいゝものです。時代精神たる研究的態度がうかゞはれていゝ。それになる不成功に終つたといふ人間への暗示は高く買ひ度い。

大衆文芸往来 / 大阪・栗林健

『大衆文芸』 3月号

雑文では小酒井不木氏の毒二題は有益なる面白いお話であると思つた。

一号一人(二) / 本田緒生

『探偵趣味』 3月号

 いつか氏を評して「根が科学者であるから潤ひの無いものになりはしないか」と云つた事がある。そして同時に「材料も沢山にあるだらうし筆も達者だから後世恐るべし」とも云つた。
(中略)
 所がその潤ひの無い氏の筆が「遺伝」「手術」に至つた時、今度はそれが非常に力強さとなつて我々に迫つて来た。更に最近の作「痴人の復讐」「恋愛曲線」になつて来ると、氏の筆の無駄の無さは氏独特の境地を開かれるに至つた。
 要するに私はそれに対してかう結論したい。氏の潤ひの無い筆は、その材料の如何によつて是ともなり非ともなるのであると。
 だから「痴人の復讐」「恋愛曲線」を発表せられる一方又「外務大臣の死」や「手紙のトリツク」等と云ふ通俗的な……変な文字だが……ものが出来上るのではないかとさう思ふ。
 私の一番好きな氏の作は「痴人の復讐」である。「恋愛曲線」も同じ程度に好きではあるが唯最後のウイツト……終り迄女の名前をあかさないと云ふ……に少し無理がありはしないかと思ふ。「痴人の復讐」の最後の「いゝ方の目をくり抜かれた」と云ふ言葉は実に私の心へずしんと非常な何とも云へない恐怖を感ぜしめた。「恋愛曲線」は別に一箇所だけさう云ふ所は無いけれ共全体の悲壮な感じはよく出てゐたと思ふ。
 唯……これは氏に送る私信の中にも書いた事だが……氏は「恋愛曲線」では曲線の由来を書くに全力を挙げ「痴人の復讐」では盆の上のくり抜かれた目の描写に力をいれてゐた。此の点が氏の作の「気持ちの悪い」と云はれる所以ではないかと考へる。もつと心理的な場面に力を入れてほしいものだと私は常に思つてゐる。

4月

孔雀の樹に就いて / 国枝史郎

『新青年』 4月号

 面白可笑しい物ばかりが、大衆物の目的ではありません。だが大衆は何ういふ作を、要求してゐるかといふことは、知る必要がありませう。その大衆の要求に投じ、面白可笑しく読ませることに由つて、大衆物へ食ひ付かせ、面白可笑しく読ませてゐる中に、作者の思想を読者に伝へ、以て味方とし同志とする。かうでなければならない筈です。さうしてチエスタアトンの『孔雀の樹』は、それにピツタリあてはまつた物だと、尠なくも私には思はれます。小酒井不木氏の訳筆が、流麗であるといふやうなことは、もう云ふ迄もありますまい。

(マイクロフォン) / 松崎天民

『新青年』 4月号

「新青年」の傑作号は、いろゝゝの意味に於て面白かつた。日本の創作には江戸川亂歩、小酒井不木――善くても、まだゝゝ駄目だ。何だか皮相的で、好奇的で、衒学的で、落く所に落ついて居ない。私達は当分、外国物で満足しませう。――以上。

(マイクロフォン) / 平山蘆江

『新青年』 4月号

 私が二十歳の時小説家で愈々身を立てると決心した時、私は科学小説とでも名けるものを書いたらと思ひました、そして私にはその資格がない事も同時に思ひましたが、それから二十余年を過ぎた今、正木さんや、小酒井さん江戸川さんがそれをやつておいでなさると思ふと、他事とは思へず嬉しい心持になつて居ります。

編輯後記 / 一記者

『新青年』 4月号

(前略)他の作品と違つて探偵小説の合作は特に興味が深い。江戸川氏の第一回を待ち焦れるものは、単に読者ばかりではあるまい。不木博士からの私信の一節に、「合作の件愈々決定、愉快に堪へません。国枝氏も大賛成、何でも私を困らせるために大に筋をこんがらかせるなどと申して来ました。」云々。それのみならよいが、「雨村大兄の加入は一段と私の心を躍らせました もうどんなことがあつてものがしません。あなたがはひらねば小生は結末を執筆せぬと宣告しておきませう。といつて、私を困らせるために筋をこんがらかされては困りますが――」
◆かうなつては雨村生ものつぴきならぬといふもの。諸君のお愛嬌に否が応でも仲間入りをしなければなるまいと頭を掻いてゐる。

編輯後記

『女性』 4月号

◇なほ読者諸君に喜んで頂きたいのは、右の外、小酒井博士ら四家の探偵小説をも掲げえたことであります。これは前記の創作と並べて考へてみて、別様の興味を覚えるものであります。

(引用者註:「前記の創作」は正宗白鳥、武者小路実篤、水上瀧太郎、泉鏡花、国枝史郎らの諸作。「四家」とは小酒井不木ほか、牧逸馬、村山知義、甲賀三郎の三氏。)

編輯後記 / 池内生

『大衆文芸』 4月号

□病気で思ひ出すのは、名古屋の同人国枝、小酒井両氏である。小酒井氏は屋外一歩も踏み出せぬと云ふ病弱にあり乍ら本誌への力作にはほとんど感謝にたへない。同じく国枝氏の精力にも亦驚くの外はないと、本誌のために喜んで居る。

限界を突破せよ / 能勢登羅

『探偵趣味』 4月号

 最近、小酒井氏によつて、徳川時代文学中の探偵的要素の研究が発表されたことは、現在探偵小説が臨みつゝあり又、将来臨むであらう危機を避ける上から観て、甚だ意義ある企てであつた。探偵小説が、直面しつゝある限界を突破する手段は、一般文芸の裡から自らの持たない要素を受容すること、即ち、内容ある表現を持つことにあるとすれば、一般文芸の中に現はれた探偵小説的要素を究めることは、限界突破のためにとらるべき第一の姿整でなければならない。

病中偶感 / 江戸川乱歩

『探偵趣味』 4月号

小酒井先生の「恋愛曲線」の前半を講義式で面白くないといふ者がある。僕は正反対だ。あすこが面白いのだ。様々な科学的操作によつて心臓を体外で生かせる。心臓が何んとやらの溶液の中でコトゝゝと独りで動いてゐる。何といふいゝ味だ。あれが面白くないといふ人の気が知れぬ。又ある者は嬰児を食ふのが汚いといふ。僕なんか汚いとは思はぬ。ある戦慄を感じる丈けだ。そして、それが作者の狙ひ所だ。あれでちやんと成功した作品だ。小酒井先生が右の様な批評を気にして、作風を換えられるとか伝聞したが僕としては賛成出来ない。もつとゝゝゝあゝいふ世界を材料にして、我々を怖がらせて貰ひたいと思ふ。たゞ描写が今一段洗練されることは望ましい。といつて僕の描写が先生をしのぐなんていふ意味では決してない。理想を目安にして物を云つてゐるのだ。これ亦誤解する勿れ。

二つの作品 / 国枝史郎

『探偵趣味』 4月号

探偵小説講座(一) / 横溝正史

『探偵趣味』 4月号
→『横溝正史探偵小説選1』 論創社 2008年8月30日発行

(前略)例えば引例1の場合において、男爵邸のボーイが誤って二階から花氷を落して、下に寝ていた小使を殺すという代りに、大臣が淫売を殺すことにしても、或はクレオパトラが小酒井不木先生を殺す事にしてもやっぱり読者は、ははア「夢遊病者の死」の焼直しだなと、直ぐに気が附くのである。

『横溝正史探偵小説選1』(論創社・2008年8月30日発行)より引用。

『趣味の探偵談』広告

『探偵趣味』 4月号

参照: 書評・新刊案内『趣味の探偵談』

5月

探偵小説壇を覗いて / 戸川貞雄

『新青年』 5月号

 ところで私は、困つたことには江戸川亂歩氏に就いては、その筆名がエドガア・ラン・アポオ(原文ママ)をもぢつたものであるとか、小酒井不木氏といふのは、医学博士小酒井光次氏のことであるとかいふやうなゴシツプ的知識以外、その所謂探偵小説の創作なるものを、殆ど全く読んでゐないのである。

 小酒井不木氏の「安死術」は、これと似寄つたテーマの小説を、いつか或る同人雑誌で読んだ記憶を喚び醒まされた。人間の理性と感情の矛盾に、得意の題材で一メス入れたといふ作品であるが、テーマもさう物珍しくはないし、読者の心理の掀翻に、飛躍的な手腕も認められない。トリツクが最初から見え透いてゐる。作者はもう少し人が悪くてもよろしい。例へば「人間椅子」の作者江戸川亂歩氏のやうに。「秘密の相似」の方が、多少無理はあるけれども面白いと思ふ。尤もこれとても作者が種を明かす一二歩手前で凡その見当はついたけれども。但しこの作品のテーマは、かやうな手紙体で露出するよりかも、文字を客観的に描き活かした方が、むつかしくはあらうが効果的である。

噂の聞き書き

『新青年』 5月号

 江戸川乱歩氏、先頃東京へ引越しの途中、小酒井博士訪問のため名古屋で下車し、駅の待合室へ入つて袴をとつて帯をしめ直したと想像したまへ。すると傍のベンチに一人の若い男がぼんやりと腰かけてゐたが、亂歩君何かに気をとられてわき見をしながら身仕度をして、さて出かけようとすると、そこにゐた男の姿が忽然として消えてゐる。それどころか、確かに今、ベンチの上へ置いた財布がない! サア大変とばかり、早速交番へ訴へ出た。
『で、その男は一体どんな人相風体でしたね?』
 と、警官に聞かれたが、亂歩君気にとめなかつたので、残念ながら少しも覚えてゐず、ぐつと答弁に詰つてしまひ、
『サア‥‥それが‥‥。でもこの辺には掏摸の常習者がゐるんでせう?』
 と奇抜な逆問に、今度はお巡査(まはり)さんが眼をパチクリ。――この悲喜劇の幕は、小酒井博士に財布ぐるみ旅費を拝借して東上となつたさうだが、掏摸もし彼を明智小五郎の作者と知らば、恐らく冷汗三斗の思ひがしたであらうか、それとも痛快を叫んだであらうか。

(マイクロフオン)◆鉄は赤き間に打て / 甲賀三郎

『新青年』 5月号

 小酒井不木氏も鋳型に溺れんとする危険さを見る。『手術』に始まり『恋愛曲線』に高潮に達した氏の世界は追随を許さざる創意と驚嘆すべき珍奇が充満してゐた。だが吾人は倦き易い。新奇は遂に新奇でなくなり、創意は漸く硬化を始めた。
 思ふに不木氏は透徹明快なる頭脳と鉄の如き意志の持主である。その為めに氏の世界には煩悶がない。不木氏の用ふる主人公は尽く超人間である、常人のなし得ざる所を平然と且つ敢然と成し遂げる。『手術』然り、『痴人の復讐』然り、『恋愛曲線』然り、『秘密の相似』然り。吾人の不木氏に望む所は超人の強さに配するに凡人の弱さを以つてせん事である。近代人の神経は強き刺激を求むる一面に哀むべき弱さがあるのである。

(マイクロフオン)◆読後寸評 / 川田功

『新青年』 5月号

『安死術』『秘密の相似』は共に名作で従来の小酒井氏の作が医学説明小説であつたのに比較して、これは素晴しい出来栄だと思ひます。殊に『安死術』が優れて居ると思ひます。

(マイクロフオン) / 松村英一

『新青年』 5月号

日本のものでは江戸川氏小酒井氏等の二三の作に感嘆しました。然し、一般の作は模倣のあとが著しく、面白味にも乏しいと思ひます。これは一つは探偵小説に一身を打込む人が無いからではありますまいか。その点で稍々遺憾を感じます。

(マイクロフオン)◆藪にらみ / 早苗生

『新青年』 5月号

『安死術』(不木氏)前の四頁は博士の序講、後の三頁が短篇といふ形で而も失敗の作。私はひそかにクレーゲルの『ソクラテスの死』のやうな内容を予想しながら読んで行つたが、読み了つて変な顔をした。あれを書くのに安死術についてあんなに多言を費した作者の心持が判らない。『秘密の相似』――一寸いゝ作だ。女の進んだ意識が結末で電光の如く閃めくといふトリツクは沈着な筆つきによつて可成り利いてゐる。文子は感情の稀薄な女だ。私の同情は寧ろTに傾く。

(マイクロフオン)◆創作四篇 / 延原謙

『新青年』 5月号

 小酒井江戸川二氏のものに就ては云ふことをさし控へる。

(マイクロフオン)四月号の創作三つ / 平林初之輔

『新青年』 5月号

『安死術』『秘密の相似』――小酒井不木作。どちらも陰酸な作だ。ことに、『秘密の相似』の方は、あまり陰酸すぎるやうに思ふ。二人とも網膜炎であつたところでとめといた方が、ユウモラスな味があつたではなからうか。女の復讐が必要以上に惨酷で、作者としてはくどいやうに思ふが。『安死術』の方も継子いぢめがあまりに深刻で、『先代萩』の政岡の場でも見るやうな印象を与へられる。『安死術』といふやうな新しい名前には新しい犯罪がつりあふやうに思ふが、これは僕一人の考へかもしらん。

編輯局より / 一記者

『新青年』 5月号

◆尚予告の中に書き洩したが小酒井氏も次号に力作を寄せられる筈である。同氏が本誌のためにどんなに力瘤を入れて下さつてゐるか、其は「桐の花」の末尾に掲げて置いた森下宛の手紙に見ても知られるであらう。何とも感謝に堪へない次第である。

大衆文芸往来 / 京都・近藤宗太郎

『大衆文芸』 5月号

小酒井先生は創作の外に、何か有益な犯罪に関する研究――例へば同氏が「新青年」に書いてゐられる「犯罪文学研究」の如きもの――をお願ひ致します。蘊蓄の深い先生の事ですから、何かありませう。

諸君!!!

『日本少年』 5月号

小酒井先生が、探偵小説界の第一人者であることは既に諸君が御承知の通りですが、今後は時々面白い傑作を御寄稿下さる筈でありますから、楽しんでお待ち下さい。すべて「日本少年」の読物は、いつもその方面の第一流の方ばかりに書いていただくのですから面白いのも無理がないわけです。

6月

桐下亭小宴 ―木下杢太郎氏邸にて― / 坂田行雄

『名古屋新聞』 6月4日 第3面

 松波院長 桂城 松波寅吉
 医学士 茂竹 那須太郎
 医大教授 元季 石田元季
 医学博士 浩甫 蔦谷貞之
 医学博士 不木 小酒井光次
 医学博士 桐下亭 木下杢太郎

(前略)不木、桐下亭の二家は、無二無三、純創作のほのふをもやして作家として文壇人としての本領に終始する。

 不木「千鳥の櫛を私す」と吟じ桂城茂竹声を揃へて「遉は文壇人だ、とても手がとどかぬ」を再三繰返へす。(後略)

 夜はふけて時針方に零時半、夜陰の街路せきとして声はないのに一座の興はなほ尽くべきもない。
 すると桐下亭先生、御自慢の牡丹七枚をゑがき不木、桂城、茂竹、元季の諸師、これにさんして名句をおどらした。すなはち当夜七人のみやげとしたのだ。

甲賀三郎『琥珀のパイプ』序 / 平林初之輔

甲賀三郎『琥珀のパイプ』 春陽堂 大正15年6月
→ 『平林初之輔探偵小説選2』 論創社 2003年11月10日発行

(前略)短い紙面に複雑な内容を盛って、すらすらとさばいてゆく手際に至っては、探偵小説界に、小酒井、江戸川両耆宿をはじめ新人少なからずといえども、氏の右に出ずるものはまずなかろうと思う。けだし氏の頭のよさのしからしむるところであろう。

『平林初之輔探偵小説選2』(論創社・2003年11月10日発行)より引用。

(読後感想)五月号の新作 / 片岡鉄平

『新青年』 6月号

なほ小酒井氏の小品「桐の花」は探偵小説の材料として作者は不満なのでせうが、芸術的で好いコントぢやないですか。

(読後感想)史郎礼讃その他 / 浜の人

『新青年』 6月号

 長篇合作の企て歓迎す。甲賀氏、史郎氏最後の纏りのために意を用ひず、独自の手腕空想を思ふが儘に伸ばされむことを望む。小酒井氏に纏りつかず、ふたゝび江戸川氏に戻つて、物語の発展更に妙なる、豈また妙ならずや。

編輯局より / 雨村生

『新青年』 6月号

◆四月十二日夜十一時、父に伴して上野を立ち、善光寺に詣で中央線にて名古屋に出で、西下する父を送り、十四日の朝東京に帰つた。
(中略)気忙しい旅ではあつたが、愉快でもあつた。老人に満足を与へたことが一つ、今一つは名古屋で小酒井、国枝氏等の会合に出会ひ、名古屋新聞の稲川、鈴木両氏予て知合の潮山氏等にお目にかゝれたことである。

探偵小説合評会 / 延原謙・江戸川乱歩・甲賀三郎

『探偵趣味』 6月号

五月創作界瞥見 / 山下利三郎

『探偵趣味』 6月号

7月

(『喜多村緑郎日記』)七月十九日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

 自分は、かうして遊んで居る間に、何か句でも作らうかと考へてゐても、今度はそれが、その気になれない。只、無暗に本を乱読する。それの多くは探偵小説だつた。悪傾向だとも考へる。然し、半七捕物帳と、江戸川乱歩の、心理試験、や小酒井の科学探偵をよむと、そのかはつてゐる点が愈々はつきりしてゐて、それからあるものを、つかむ事は出来る。

監獄破りの色々 / 瀬頭紫雀

『新青年』 7月号

小酒井博士が「探偵趣味」四月号に「私が嘗て某雑誌にアメリカの一囚人が、毛糸を唾でしめて、それに土塵をつけてやすりとなし、それで檻房の鉄格子を三ヶ年に渡つて断ち切つて脱獄した事実談を書いたら一読者から私が創作した話ではないかとたづねて来た」と述べられて居る。一寸つくり話のやうに普通の人には聞えるだらうが、然しさうした事実は例をアメリカに求めるまでもなく、内地にも沢山ある。

読後の感 / 牧逸馬

『新青年』 7月号

 小酒井先生の『印象』を第一に推します。先生独特のメデカル・ストウリイですが、それだけにまた恐しく小じんまり纏つてゐて、説明のないところが大いに好きです。『眼のあをい赤ん坊』母が外交官の夫人であるところなど、そして単に最初に外交官の夫人とだけ断つてほかに何も仰言つてゐないところなど、おどろくほど用意周到で、思ひつめた女の洒落気?――常人にはとても大真面目の――がよく出てゐて、しかもすこしの無駄もありませぬ。じつに完全な手法でございませう。たゞ、話中話の型がいさゝか鼻につかないでせうか。いきなりB氏を主人公にして客観的に行つたほうが効果が強くはなかつたらうかと思ひます。それにもう一つ欲を申せば、女性の会話にもつと現実的なやはらかみがあつてもよくはないでせうか。それはこの御話ばかりについての不満ではございませんが、一たい先生のお写しになる女は、ときどき失礼ながら田舎の女学生のやうな言葉づかひをするやうな気がしてなりません。どうしてゞせう? ともかく題材といひ手法といひ、このお作は立派な短篇と存じます。あやしくも美しい北斎の絵と近代女の神経、それを包む科学の神秘さ、今さらながら小酒井先生のまへに低頭させていたゞきます。

冷汗三斗 / 山本禾太郎

『新青年』 7月号

 二つの鑑定書には、スツカリ参つてしまひました。何の知識も持たぬ私が、あんなものを書くと云ふことが僭上の沙汰でした。『新青年』には小酒井先生や、正木先生が居られるのに、いかに盲蛇でも冷汗が流れたことでした。

(マイクロフオン) / 梅原北明

『新青年』 7月号

小酒井不木氏の「印象」は、私にマンテガツサ氏とハバロツク・エリス氏を思ひ出させました。両氏の妊娠心理学中には此種の実例が数多く挙げられて居ります。殊にエリス氏の「妊娠の激動と母性的印象」と示ふ項の中に多く挙げられて居ります。又実際の事件として私の知る範囲では大正二年九月二十四日の長野新聞にもあれと同じ事件が出てゐます。此他、私の新聞のスクラツプ・ブツクを全部見たら此れと類似の事件は見出せることでせう。併し吾々が、あの種の事件を取材にしたら生意気になる。矢張り小酒井氏の筆になつて始めて生きてくると感じました。

(マイクロフオン) / 田中早苗

『新青年』 7月号

『印象』――十分の考察を経た、熱の籠つた作にて、読者を深き感銘に惹き入るゝ力を有し候。これは作者の気魄とでも申すべきか。兎に角、小酒井氏は或る一線を突破した人と信じ申候。

(マイクロフオン)「印象」と「GS一一一六」 / 甲賀三郎

『新青年』 7月号

「印象」は不木氏の従来の作品中上位を占めるものとは思はぬ。作者にとつては意外かも知れぬが、私は寧ろ「桐の花」の方が好いと思ふ。不木氏の作品は説明的だと云ふ非難を聞くが、私はもう一つ、矢張り之も科学者の陥り易い所かと思ふが、取扱ひ方が概念的である欠点があると思ふ。例へば「印象」の女主人公の復讐の動機は女は夫が不身持すれば復讐を企てるものであるといふ概念により、復讐の方法の残忍なる事についてはロムブロソーの文献によつて説明してある。復讐を企てるまでの女主人公の心理にはもつと複雑なものがなかつたか、煩悶はなかつたか、遺憾ながら書かれてゐない。余りに概念的だと思ふ。
 それから「印象」には従来氏の作品に見なかつた実際的な欠点がある。女主人公の復讐は子供を健全に生むと云ふ事で達せられるのだ。と云ふのは彼女が子供が健全であると云ふ事を知つただけで満足して死んで行く所を見ると、彼女には碧眼児を生む事は予期し得る事実だつたらしいからである。然らば何故に彼女は黙々として生まうとしなかつたか。
 第一医師に復讐云々と云ふ事を口外するのは寧ろ人工流産を施される危険を増す事はあつても、軽減する事は出来ない。
 第二、超自然現象で碧眼児を生む事は、自然的に碧眼児を生む事よりも、夫の苦痛を軽減する。云ひ換へれば超自然現象の口実は夫の打撃を少くする事にしか役立たない。
 即ち、彼女は復讐の為めには一、医師に対しては夫に対する愛の為めに身を殺して子を生まん事を訴へ、巧みに医師を絡籠しなければならない。二、彼女は碧眼児を生む的確率を多くする為めに、黙々として鬼の絵を眺めなければならない。さうして三、彼女の告白は彼女の死後に現はれて、読む者をして膚に粟を生じせしめなければいけないと思ふ。

 本格探偵小説家は当選作「窓」に対する小酒井不木氏の言を三読すべきだと思ふ。即ち本格小説にあつては嫌疑深きものが犯人に非ざる事は自明の理である為めにそこに、読者が犯人に非ずと信じながら、尚且つ手に汗を握つて犯人に非ざらん事を祈る何ものかがなくてはならないのである。

(マイクロフオン) / 大下宇陀児

『新青年』 7月号

小酒井氏の「印象」は同氏の「肉腫」と行き方を同くし、探偵味に於ては「肉腫」より豊富ですが、与へられた感銘は「肉腫」の方が遙かに上でした。

(マイクロフオン) / S・W生

『新青年』 7月号

 小酒井不木氏の作品が衒学的であるとか研究室を出ないとか云つて悪く云ふ人があるが、私はむしろそう云ふ所がいゝのだと思ふ。
 不木氏を研究室から引張り出して了つたら、誰があの思ひもつかぬ考案を発表するだろう横溝氏は欺されてゐるやうで腹立たしくなると云つて居られるが一般読者である私達にとつてはそれが愉快でたまらないのです。不木氏よ願はくはこれからも衒学的で研究室を出ない作品をうんと発表して下さい。

(マイクロフオン) / 名柄みどり

『新青年』 7月号

 小酒井さんは学者で芸術家ではないのですからあたしはそのつもりで読んでゐます。たとへ文章は宇野式に冗漫でも(尤もずつと華さはあるけれど)江戸川さんは小説家ですから主観が燃えてゐます感情が旋律となつてうづまきます。江戸川さんのはよんで考へさせられますが小酒井さんのは感じがうけ入れられません。

編輯後記 / 池内生

『大衆文芸』 7月号

□前号で発表した甲賀三郎氏の創作『古名刺奇譚』は大変な評判となつてゐる。あの堅実な筆致で些の淀みもなく、グンゝゝと事件を迷宮にすゝめて行くところ、流石に甲賀氏ならではと首肯される。同氏の作品に対して読者から十二篇感想を寄せられた。推薦者の江戸川乱歩氏は勿論の事、同じ探偵趣味仲間の小酒井不木氏等も『甲賀氏の力作を大衆文芸誌上に見ることは、非常に心強い、愉快な事です』と申越されてゐます。編輯者も今後再び甲賀三郎氏の力作発表の機会を得たいものと今から期待してゐる。

お化人形 / 江戸川生

『探偵趣味』 7月号

□半年ぶりで大阪、神戸、名古屋と廻つて来ました。用事といへば大阪放送局から招かれたのですが、その方はまあきつかけみたいなもので、重に横溝正史さんと神戸の元町をぶらついたりなんかした訳です。
 (中略)
 帰りには例によつて名古屋の小酒井さんへ御機嫌伺ひにお寄りしました。本田緒生さんは御商売の手が抜けず、潮山長三さんと三人で、鳥屋を御馳走になり、それから、もう夜の十時頃でしたが、國枝史郎さんの所へ押しかけました。國枝さんでも更らに御馳走に預り、そこへ名古屋新聞の稲川さんも来合せて、大いに話がはづみ、お暇したのは一時を過ぎて居りました。

8月

(『喜多村緑郎日記』)八月十五日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

晴。朝七時頃、林氏の手代、丸淵琴治君が来た。
 模擬裁判――陪審員、宣伝――をやるので僕に出てもらひたいといふのだ。脚本は小酒井が書くと云ふ。事件を二幕ほど取あつかつて、やらうと云ふのである。一度帰へして午後迄に返事を聞きにくるやうにいつて帰す。
 (中略)
 林の手代には、模擬裁判だけでなくあとの興行としてやつてゆくかどうかの返事を改めて聞かせてくれるやうにといつて帰へした。

(『喜多村緑郎日記』)八月廿日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

 名古屋から、小酒井氏脚本、「パレツトナイフ」の印刷したものが届く。読んでみると、実に、舞台は新派のそれである。甚だ拙なるものといへる。
 言葉の不用意といつたらない。構想も、いつもの小酒井(言葉は、いつもうまくないが)氏の書くべき医学上の問題をとりあつかつたものでないのが第一に飽きたりない。
 出来るだけよく理解して猛烈に訂正を加へた。

(『喜多村緑郎日記』)八月廿一日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

晴。朝の散歩。小酒井氏の脚本訂正。

(『喜多村緑郎日記』)八月廿二日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

 小酒井に会見す。寸楽で会合する、潮山長三君をホテルへつれて来て語る。

(『喜多村緑郎日記』)八月廿三日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

 昨日は小酒井氏に会つて、脚本について突込んで質問をすると、結局、プランを立てて潮山と云ふ弟子のやうな男に書かせたと云ふ訳であつた。その為に、山田弁護士に今度の本によつて、鼎の軽重を問はないでくれと伝へて貰ひたいと云つたわけだ。
 末広座で朝の十時から、稽古にかゝる。
 弁護士連、小酒井、潮山、その他関係者も皆そのけいこ振りを見物してゐた。
 俳優は、山田九州男、芳野、その他、金子新八とか云ふ地廻りの女形など聞いた事もない連中で、素人芝居といつた方が当を得てゐる。日活の方の小泉嘉助、とか云ふのと、女優が来ると云ふがまだいなかつた。可成手きびしい稽古をやつた。九時迄かゝる。
 山田弁護士の招待で、栄ちやんも一緒に、小酒井、潮山も同伴で、「八幡」へ行く。

(『喜多村緑郎日記』)八月廿八日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

 栄ちやんと、松井君とで共済で飯を食つて芝居へいつて、皆にいとま乞ひをして、小酒井氏の来て居たのを誘つて、精養軒へ招待した、栄ちやん、松井にも来てもらつた。
 小酒井氏を送つてそこで長い間雑談をして、また、「鶴木」と云ふうちへ栄ちやんにつれられていつて、そこから午前三時二十分の列車で立つて来た。伊藤氏、また観魚にもそこであふ。

(近ごろ読んだもの)独逸の探偵小説界 ア・ローゼンハイン小論 / 浜野生

『新青年』 8月号

 其中で、秀逸と思はれるものを挙て見ると、第一に漢堡(ハンブルク)の或銀行内の犯罪を扱つた『金庫検閲』(die Kassenrevivion)がある。之は伯林(ベルリン)の国民新聞(フオルクス・ツアイツング)に発表されたもので、一般読者から懸賞で犯人とその犯行経路の予想を募つた所が、一万の解答中、的中者は只一人であつた――といふ肩書つきの三十回かりの者である。
 第二には、ゴテンブルクの或る発明家を主人公にした、『見えざる客』(Der unsichtbare Gost)伯林を舞台にした、或る家庭の悲劇を骨子とする『白い蘭』(Die Weisse Orchide)(これは小酒井氏が、此の誌上に訳載された事がある)ストツクホルムの飛行競技に際して、某国政府の企んだ陰謀を取り扱つた『西風に逆流する煙(Rauch im Westwind)等、其の他変つた題材のものには、『死者、もし帰らずば‥‥』(Wenu die Toten Wiederkehren....)『名刺』(Die Visitenkarte)『乾板に現はれた三人』(Die Drei auf der Platte)『涙の門』(Das Tor der Tranen)、表現法の上で新しみを出した『前桟敷一号』(Prosse niumsloge Nf.1)等が挙げられるであらう。

(マイクロフオン)大家新家一網打尽 / 甲賀三郎

『新青年』 8月号

◇小酒井不木君近来安きについて、恋愛曲線以後雄篇を見ざるは淋し。されど不精進不木君の比に非ざるは江戸川亂歩君なり。踊る一寸法師以来殆ど君の作に接せず。寂しい哉。

(広告)『死の接吻』

『新青年』 8月号

参照: 書評・新刊案内『死の接吻』

大衆文芸往来 / 四谷・福富生

『大衆文芸』 8月号

五・六月号大変面白く拝見致しました。私は五月号では小酒井氏の「死の接吻」の(一)を、六月号では国枝氏の「陰亡堀」を殊に興味深く読みました。

9月

(『喜多村緑郎日記』)九月三日 / 喜多村緑郎

『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 昭和37年5月16日発行 演劇出版社

 小酒井氏から丁寧な挨拶状が来る。寺田からも小酒井の所を知らせて来る。

(広告)『キング』9月号

紅蜘蛛の怪異(探偵小説)…小酒井不木
 お馴染の博士会心の傑作。恐らく最近の探偵小説中傑出の大作である。多感な青年が図らずも遭遇した戦慄すべき事件は何? 総身わなゝく大探偵小説。

(マイクロフオン)愚痴一つ / 春生

『新青年』 9月号

 何が不思議だといつて「五階の窓」の第四回ほど不思議なものは近頃ない。野田幸吉が無届で野口と改姓してゐたり、つや子の親と西村とが変な関係でむすびつけられたり、フロイドの通俗講義があつたりスパナの説明があつたり、とても我慢にも読み続ける気がなくなつて了ふ(。)こんなものは「キング」か「講談倶楽部」へでもゆづつて、もう少しぴりゝとしたところを読まして貰ひたいものだ。

(マイクロフオン) / 武田晃

『新青年』 9月号

「五階の窓」は、連作ばやりの折柄、いゝ催しでもあるが、中味は面白くないと思ふ。失礼ながら失敗ではあるまいか。之は最初の疑問が、小さかつたためではないでせうか。興味は、疑問の深さ、力強さに比例するのではないか。

(広告)『学者気質』

『新青年』 9月号

参照: 書評・新刊案内『学者気質』

大衆文芸往来

『大衆文芸』 9月号

□小酒井不木氏――最近はなかなか健康で、過日「不木庵主人の名古屋見物」と云ふ漫文風の名古屋見物記を十回名古屋新聞に寄稿せられました。

大衆文芸往来 / 大阪市・布井勝彦生

『大衆文芸』 9月号

五月号――小酒井氏の「死の接吻」は少し通俗的に堕してはゐまいか?

大衆文芸往来 / 芙蓉

『大衆文芸』 9月号

小酒井先生の「死の接吻」は小気味よくよませて頂きました。

大衆文芸往来 / 名古屋・水谷

『大衆文芸』 9月号

小酒井氏の探偵物が願ひたい。(中略)おなじ名古屋は大衆作家国枝氏、小酒井氏を持ちながら両氏共に御病気とは小生事真に心細く感じます。

大衆文芸往来 / 岡崎・犬塚生

『大衆文芸』 9月号

小酒井氏はやはり研究室に居られた方がいゝと思ひました。殊に「狂女と犬」の最後の二行はなくもがなでせう。

大衆文芸往来 / 福岡市・一愛読者

『大衆文芸』 9月号

江戸川、小酒井、正木氏の御作を毎号特に期待して居ます、

大衆文芸往来 / 牛込・伊藤徳太郎

『大衆文芸』 9月号

正木、小酒井、國枝、矢田さんと、毎号面白い又好きな作家です

大衆文芸往来 / 京都・村山兼二郎

『大衆文芸』 9月号

いつも蘆江氏の唐人船は期待してゐます。不木、史郎、清二、不如丘、乱歩の諸氏の作品もです、

卵の殻の酒樽 / 平林初之輔

『文芸春秋』 9月号

 私は、行きあたりばつたりに筆をもつた。今から二分間さきに、このペンで、この原稿紙のつゞきに何を書くか、皆目自分で見当がついてゐないのである。小酒井不木氏が、小説でも論文でも題を出して貰ふと非常に書きよいと言はれたことがあるが、私も完全にその通りである。(後略)

10月

ルヴエル雑感 / 井上勇

『新青年』 10月号

 ルヴエルのほかのものはまだ読んでゐないので読み次第御紹介することにして締括りのために大体論を述べてみると、彼は決して吾等が小酒井、江戸川、甲賀(、)横溝諸氏の上にある作家ではないと思ふ。只、以上の諸氏が全然持つてゐないか、持つてゐても非常に少ない特徴が彼には多分にある。それは彼の健常性である。彼は恐怖を求め、異常を好んだけれど、その半面人生と人間を正当に視る丈けの予猶と健康なる精神を持つてゐる。そして此れは人間として何より大切なことであり、特に作家にとつて大切なものと考へる。それがリラダンに及ばず、ポオに遥かに劣りながら彼が尚低いながらに文壇的地位を占め得てゐた理由であると解する。

(マイクロフオン)◇納涼 / 田中早苗

『新青年』 10月号

 八月‥‥日。今日は大下氏を叩いて支那の錬丹といふ長講一席を伺ひ、それから小酒井氏と歌舞伎座に默阿彌劇をのぞき、帰りは江戸川氏と夜の浅草をぶらついて久しぶりに安来ぶしを聴いたら愉快でした。それはうそです。実は例の三階の借り部屋に寝ころんで「新青年」九月号の、右三氏の書かれた「不老不死の神薬」だの、「默阿彌の悪人」だの、「浅草趣味」をはじめとして、香涯先生のろくろ首のお話、松雄氏の「ラヂオの怪」から、坂本氏専売サムの活躍、探偵映画「蝙蝠」の記事といふ点など、そこはかとなく読みゆけば、どれもこれも物凄いものばかりで(、)僕は化物屋敷の地下室へ飛びこんだのではないかと思つたほど、それほど東西古今の妖気を満喫し、おかげですつかり涼しくなりました。

(マイクロフオン)◇九月号瞥見 / 甲賀三郎

『新青年』 10月号

◆次にマイクロフオンだが、対手が春生と云ふ匿名で始末が悪いが、黙つてゐるのは癪だから鳥渡対手になつて置く。五階の窓の四回野田が野口になつたのは一言ない。だが「キング」へでも持つて行けとかもつとぴりつとしたものを書けと云ふのは断じて承知しない、僕はあれでよいと思つてゐる。この人の云つてるのは批評でも感想でもない。あれは漫罵と云ふものだ。つや子の親と西村とをどんな関係で結びつけようが作者の勝手だ。頭から反感を持つて人のものを読むのは止めて貰ひたいものだ。

『生ける宝冠』広告

『新青年』 10月号

参照: 書評・新刊案内『生ける宝冠』

九月の雑誌から / 材木町人

『騒人』 10月号

(※「愚人の毒」の真相に触れています。)

『愚人の毒』はうまい物だ。医師の犯罪を取扱つた探偵小説だが、予審判事が召喚した医師を前に置て一人で事件の経過を喋り乍ら推論を進めて行くうちに独りでに目前の医師が真犯人だと云ふ動きの取れぬ結論に到達して到頭医師が恐れ入つて終ふといふ筋だが、判事の明快な推理の論法がいかにも気持がいゝ、併しだ、これも種を割れば、医師が与へた亜砒酸の混じた薬が保留されてある以上医師の殺人未遂罪は最初から判明つてゐる話で医師を恐れ入らせる為に判事があゝまで饒舌を弄する必要はないとも云へる。同じ作者の『メヂユーサの首』(大衆文芸)も読んだが、此の方は連絡が突飛で必然性が乏しく、愚人の毒の比ではない。

大衆文芸往来

『大衆文芸』 10月号

□小酒井不木氏――「闘病術」をこの程春陽堂から出版せられました。これは肺患全治の同氏がその体験を基として執筆せられたものであります。

D・S漫談 / 久米正雄

『探偵趣味』 10月号

参照: 「D・S漫談」

同人消息

『探偵趣味』 10月号

小酒井不木氏
益々御壮健。新青年一月号より愈々長編小説に取掛られる由。

11月

大阪京都名古屋を歩いて / 森下雨村

『新青年』 11月号

参照: 翻刻ライブラリ(同時代資料編)「大阪京都名古屋を歩いて」

(「五階の窓」執筆に就いて)「五階の窓」所感 / 江戸川乱歩

『新青年』 11月号

(「五階の窓」執筆に就いて)五階感想 / 平林初之輔

『新青年』 11月号

 小酒井さんもさう言はれてゐたことがありますが、私も何か題があると書きよい方で、別だん先のことなどは考へずに書き出して一日で書き終て了ひました。

私の分担のところをのぞくとみんな面白く拝見しましたが、ことに最後の小酒井さんは大変なお骨折りだつたと思ひます。実をいへば私の所辺(ところあたり)で屍体解剖をやるのが順序でせうが、小酒井博士があとにひかへて居られるので、屍体の屍の字も言へなかつたことには皆弱つただらうと思ひます。

(「五階の窓」執筆に就いて)控力士を心頼みに / 雨村生

『新青年』 11月号

 江戸川、平林、甲賀の三君と盛京亭の支那料理に舌鼓を打ちながら、合作物の相談をした時、人物や筋など一切取りきめずに、各自の思ふまゝにやらうではないか。江戸川君には頭をたのみ、小酒井君には最後(おしまひ)を頼むことにしよう。その後はといふことになつて、國枝君は名古屋にゐるから、便利上小酒井君の前、即ち第五回を押しつけよう。さて、それでは二、三、四を誰がどう受持つかとなると二回は亂歩君の後だから、少々骨が折れよう三回はまアどうでもよいとして、四回は峠だから又骨が折れるにきまつてゐる。骨の折れるところは玄人に委すべしだと、二回を平林君に、三回は本格派の頭目甲賀君に押しつけて、内々楽な役割を受持つた心算(つもり)でゐたのだ。

 とに角最初に打合せをしなかつたので、皆が苦しかつたことゝ思ふ。それにしても一等骨の折れたのは、何と言つても小酒井君だらう。氏の事だから大丈夫とは思つてゐたが、何しろ五人の執筆者が散々引掻き廻した後始末である、少々心配でない事もなかつた。が、遉(さすが)に矢張小酒井君だつた。私の心配などそ知らぬ顔に、小憎らしい程明快な解決を与へて下さつた。厚く氏の労を犒いたいと思ふ。

(「五階の窓」執筆に就いて)帰納的なりしを憾む / 甲賀三郎

『新青年』 11月号

 終篇は未だ読んでゐない。雨村兄の話では前半は第五回までの執筆者の矛盾誤謬などの弥縫(びぼう)で、後半は不木兄一流の頗る明快な驚嘆すべき解決であると云ふ事だ。

(「五階の窓」執筆に就いて)不満二三 / 国枝史郎

『新青年』 11月号

作全体として各人物の性格がハツキリしなかつたのは合作としては止むを得ないことでせうが不満と云へば不満とも云へます。しめくゝりをする小酒井氏の作を読んでゐない現在にあつては是以上申し上げることも無ささうです。牧逸馬、本田緒生、横溝正史、城昌幸、水谷準諸氏の如き若手作家で再び合作をされては如何?

『五階の窓』乙種当選者発表

『新青年』 11月号

◆何しろ小酒井不木氏の解決があまりに読者の意表に出たものだから、数百通集つた解答中の正解とも見做すべきものは、まことに寥々たるものであつた。
◆厳密に言へば、他殺的自殺とも言ふべきであるが、うまく言ひ当てた解答が殆んどなかつたので、やむなくそれに近いと思はれるものを以て当選と決す事にした。
◆左に当選者氏名を発表するとともに、此の挙に対していろいろ御声援を賜つた大方諸君に対して、厚く御礼申上げる次第である。
(中略)
◆尚お慰みまでに応募総数三百二十一通を内訳して見れば
 他殺となす者、 二七五
 自殺となす者、 三二
 雑 一四
 といふ順序で、他殺の内、犯人としては相変らず舟木新次郎が大多数を占めてゐた。

(マイクロフオン) / 城昌幸

『新青年』 11月号

それから当選作の『五階の窓』の解釈は気に入りました。

(マイクロフオン) / 川田功

『新青年』 11月号

『五階の窓』は惜いからまだ読みません。

(マイクロフオン) / 高田義一郎

『新青年』 11月号

『正木不如丘に小酒井不木だが医者の雅号にはなぜさう不をつけるんだらう』といふ不審を抱いて居る人があつた。

(予告)新春より連載の長篇探偵小説 疑問の黒枠 小酒井不木

『新青年』 11月号

 名作『恋愛曲線』をはじめとして、玲瓏珠玉の如き短篇の数々を以つて、我々の渇を癒して下すつた小酒井不木氏は、更に此の度、本誌の為、一大長篇に筆を染められる事になつた。骨子をなすところ、氏年来の腹案であつて、更に犀利なる氏の頭脳と豊富なる蘊蓄の限りを傾けられる。蓋し想像に余りあるではないか。今や氏は、中京の空の下に於て、想(おもひ)を練り、念を凝す事に余念がない。鶴首して発表の日を待つべきのみである。

編輯局より / (横溝)

『新青年』 11月号

◆別項予告の通り、新年号よりは更に小酒井不木氏の長篇が戴ける事になつてゐる。此の二大家の長篇を殆んど同時に掲載し得るなんて、本誌ならではの芸当である。

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『新青年』 11月号

参照: 書評・新刊案内『死の接吻』

大衆文芸往来

『大衆文芸』 11月号

□小酒井不木氏――名著「闘病術」の会を名古屋新聞主催にて開催盛大でした。

大衆文芸往来 / 宮崎・富奈多侑作

『大衆文芸』 11月号

(前略)江戸川乱歩、小酒井不木両氏の作品は何れの誌上のも見逃すことの嫌ひな男なんです。
 両氏の奮闘を祈る。

大衆文芸往来 / 紊堂庵

『大衆文芸』 11月号

九月号は余り期待したものに接せない(中略)小酒井氏のはおちが悪趣味だ。恋愛曲線何々に見る常套手段がチト鼻につく。

大衆文芸往来 / 府下・吉田亮

『大衆文芸』 11月号

小酒井氏の本月(※)のは先づ読める。

(※)9月号

大衆文芸往来 / 紫芙蓉

『大衆文芸』 11月号

九月号拝見してゐますと背中迄冷たくなりさうなのはメヂユーサの首が第一で他のは又私等には批評出来ないよいところがあつてたまらなく嬉しくなりました。

大衆文芸往来 / 兵庫・小酒井史郎

『大衆文芸』 11月号

九月号の小酒井博士の「メジユーサの首」土師清二氏の「鎌倉三代物語」は一番面白く読みました。小酒井博士の御作は、いつでも面白く感じます。探偵小説もどしどし御願ひ致します。

12月

一転機にある探偵小説(下)/ 森下雨村

『読売新聞』 第4面 12月1日

 その意味で「新青年」新年号より連載される、小酒井不木氏の「疑問の黒枠」を私は大いに推賞したいと思ふ。これは日本に産れた最初の長篇探偵小説であつて、それだけでも、既に充分一読の価値あるものであるが、私の更にこの作品に敬服する所以は、氏が敢然として、その構想、形式を、通俗物らしくとられたところにある。おそらく読者は数ヶ月間、その興味に引摺られて行く事であらうがその興味たるや、所謂芸術的なる物でもなく、と言つて俗悪低級なるアメリカあたりの探偵小説的興味でもない。
 そこに溢れ出してゐるある種の気品は、この作品をして、何人に読ませても危険性のないものにしてゐる。
 私の思ふのに、かういふ作品こそ、現在やゝ沈滞の気味にある探偵小説界の空気を、一新するものであると同時に、将来の探偵小説の行き方を暗示してゐるものである。最近一向振はなくなつた新進作家たちは、この作品から必ず何物かを得る事が出来るに違ひないと思ふ。

探偵文壇鳥瞰 / 国枝史郎

『新青年』 12月号

数多く作つたといふ点では、小酒井不木氏かも知れません。従つて随分とムラがありました。『恋愛曲線』『肉腫』『印象』『安死術』『愚人の毒』は佳作であり、わけても『恋愛曲線』は、氏の専門の医学的智識と、一味甘い人情とが、渾然融和した傑作として、あらゆる探偵小説愛読者から、讃美された筈でございます。ところでちつとも不思議でない事には、所謂る実験室的作物の味が、多く加味されてゐればゐる程、氏の作はいつも面白く、その味ひの薄い時は、面白くない作になつて居ります。然るに氏に対して一二の評者が、実験室を出ろ出ろと、忠告めいたことを云つて居りますが、私としては反対に、氏よ、もつとゝゝゝ実験室へ、おこもりなさいと云ひ度いのであります。

『新青年』誌上に連載した、『五階の窓』といふ連作も、相当人気を呼びましたが、その出来栄に到つては、精々の所六十五点ぐらゐ、威張れない作品に堕しました。江戸川亂歩氏と森下雨村氏とが、探偵小説の骨法通り、真面目に真剣に書きましたのを、他の三氏が少しく奔放に、謂ふべくんばヨタを織り込んだため、百点たる可きこの作を、六十五点に下落させたやうです。

 探偵趣味的読物も可成り本年は喜ばれたやうで、多くの雑誌が掲げました。稲垣紅毛氏、小酒井不木氏、小泉ハ之助氏、南波巨山氏、松谷蒼生氏、高田義一郎氏、前田誠孝氏、古畑種基氏等々の人が、目立つた仕事を致しました。小泉氏の事実的探偵創作『眼』『腕』『梟』は有名な物で洛陽の紙価を高めた筈です。深見ヘンリー氏の随筆も面白く思はれました。

本年度に現れたる新作家 / 甲賀三郎

『新青年』 12月号

 大正十五年度は新興探偵小説界に取つて、実に多幸の年であつた。新春劈頭わが新青年誌は恋愛曲線、踊る一寸法師の二雄篇、其他数篇の傑作を満載して、大衆文芸グランドに鮮なホームランを戞飛(かつと)ばして以来、連月大家新進の力作に加ふるに、佐藤春夫廣津和郎正木不如丘片岡鐵兵水守龜之助平林初之輔川田功氏等知名の士の作――その殆どすべてが探偵小説としての処女作――を発表して、遂に殆ど完全に大衆文芸グランドを征服して終(しま)つた。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 戸川貞雄

『新青年』 12月号

 余り見てをりませんので、本年度といふやうな大きなことは申せませんが、近来の佳作だと感心しましたものは『愚人の毒』(改造九月・小酒井不木氏)と『鏡地獄』(大衆文芸十月・江戸川亂歩氏)とであります。前者では水も洩らさぬ畳み込み式な技巧に、後者では谷崎氏の『金色の死』に似た幻怪な着想を、科学的にリアリスチツクにコンクリートした手腕に感心したのであります。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 大下宇陀児

『新青年』 12月号

 翻訳では、何と云つても、『孔雀の樹』が第一だつたが、ビーストンの『黄昏』、オヽヘンリの『頭髪と時計』リイコックの『五六番さん』等が頭に残つて居る、

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 山下利三郎

『新青年』 12月号

『安死術』小酒井氏、説明的な処をさへ省いたら実際好いお作だと考へますが、併しあれがないと判り難くなるんですよ。でも好かつたですよ。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 巨勢洵一郎

『新青年』 12月号

 いろゝゝな意味において私は小酒井氏の『恋愛曲線』を推賞します。第一に、われわれの思ひも及ばぬ美し幻想の世界、第二にこの幻想を盛るに快よき筆触、第三にわれゝゝの理智を満足させるだけの科学的基礎。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 伊藤松雄

『新青年』 12月号

 小酒井不木氏の諸作品。この作家がもつとも強身としてゐる医学的智識に読者として興味をもつが故でもありませうが。
 この点だけは他の作家の追随を許さぬものです。
 併しそろゝゝこの境界からぬけだされたらどんなものでせう。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 平林初之輔

『新青年』 12月号
→ 『平林初之輔探偵小説選2』 論創社 2003年11月10日発行

今年印象に残れる作品
 小酒井不木 恋愛曲線
 羽志主水 監獄部屋

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 川田功

『新青年』 12月号

小酒井氏の『秘密の相似』も新し味があると思ひます。

小酒井氏『印象』は余り評判が好くなかつたらしい様ですが私はと思つてゐます。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 水谷準

『新青年』 12月号

 創作では、江戸川氏『お勢登場』(大衆文芸)殊につゞらの蓋を開ける場面。甲賀氏『古名刺奇譚』の、自分の葬式を見送る描写。横溝氏諸作の味はひ。小酒井氏の『肉腫』等。一体に創作では新鮮の気が失せはしないでせうか。もつと驚かして貰へるつもりなのだが。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 角田喜久雄

『新青年』 12月号

恋愛曲線(小酒井氏)ニツケルの文鎮(甲賀氏)広告人形(横溝氏)第一義(山下氏)――等以上新青年。

翻訳では、孔雀の樹(チエスタートン)少年の悲劇(ミツドルトン)女学校事件(ウオドハウス)等。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 相原藤也

『新青年』 12月号

 今年は創作探偵小説全盛期に入れる事が認められます、そのせゐでもあるまいが、翻訳物には素晴らしい傑作は見当らない様でした。先づチエスタートン作『孔雀の樹』(新青年三月号)なぞ大物の為か記憶に残つて居ます。創作は一月増しに多くの佳作が発表されて来て頗る頼もしく感ぜられますが、さて特に卓越した作品はと云ふと鳥渡迷ひます。兎角の非難はあるが、『踊る一寸法師』と『恋愛曲線』(共に新青年一月号)など今年度の中に入れてよいならば最も佳かつたと思ひます。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 夢野久作

『新青年』 12月号

◇印象(小酒井氏)明るい筆に敬服しました。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 西田政治

『新青年』 12月号

翻訳では新青年に載つた『孔雀の』は自分の好きなチエスタートンのものだけに、スツカリ好い気もちにされて嬉しかつた。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 本田緒生

『新青年』 12月号

 小酒井氏『恋愛曲線』(新青年)凄い事に於て。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 福田正夫

『新青年』 12月号

 読んでしまうと片端から忘れてしまふ(どちらかと言へばわざとすら忘れたいほどの)性質なのでこまかいことはなんにもおぼえてゐません。名前から言へば小酒井さん、江戸川さん、甲賀さんなどの印象が一番鮮かです。主として『新青年』で読んだのです。小酒井さんの医学的境地からかかれたものを特によろこんで読んだこともおぼえてゐます。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 田中早苗

『新青年』 12月号

不木氏の作では生れたる小説『印象』と、こしらへた小説『恋愛曲線』とはてんで較べものにならぬ。後者は甚だ悪い遊戯だ。

『五階の窓』は寧ろあれを有名にした雨村氏の辣腕に驚くのみ。

(大正十五年度 探偵小説壇の総決算) / 江戸川乱歩

『新青年』 12月号

 感心したものは、その都度マイクロフオンで感想を述べてゐる様だ。平林、小酒井、甲賀、横溝、牧の諸氏のものは別として、記憶に残つてゐるのは、新進作家号の『遺書』『恋文』(原名失念)城氏の『 杯』地味井氏の『煙突奇譚』宇野氏の『殺人映画』等々。

翻訳では小酒井氏のチエスタトン物、平林氏のマリーロージエ等々。

編輯日誌 / 一記者

『新青年』 12月号

(引用者注:9月)二十六日 小酒井不木氏より来信。「長篇の方が気にかゝり、他のことに一切手がつかず、但し十二月号原稿不足なら電報を頼む」と。新年号からの長篇こそは魂を打ち込んで書くと直直言はれた氏の言葉を思ひ出しては、強つてお願ひする気にもなれず手紙にて御厚意を謝しおく。

大衆文芸往来

『大衆文芸』 12月号

□小酒井不木氏――名著「闘病術」の売行頗るよく、同氏はその質問の応答に忙殺されて居られます。

大衆文芸往来 / 和歌山・茂野篤雄

『大衆文芸』 12月号

現代畸人中にも生ける殉死、新案探偵法等は非常に面白く思はれました。

大衆文芸往来 / 岡崎市・鷹本かづ

『大衆文芸』 12月号

小酒井様の名古屋新聞における漫文は拝見いたしましてよ。ずゐ分面白うござんした。あれで氏の健康が追々快方に向きつゝある事をひそかに察してよろこんでますの。どうぞ健闘されん事を!!