探偵小説に関係ある人々に左の様な四つの質問を発して二十余通の解答を得た。甚だ愚問で恐縮だつたけれど、かうして解答を比べて見るのも一興かと思ふ。森下氏春日野氏西田氏のは長いものだつたので、別にのせた。併せ見られたい。
1 探偵小説は芸術ではないか。
2 探偵小説は将来どんな風に変つて行くであらうか、又変ることを望まれるか。
3 探偵小説目下の流行は永読(※1)するか否か。
4 お好きな探偵作家二三とその代表作。
解答の順序は不同です。
1 探偵小説は芸術です。
2 当分は之迄の形式を繰返すに過ぎないと思ひます。然し、別に変つて行かんでもかまひません。大天才が出て、新らしい形式を示してくれぬ以上、どんな形式が後々好かれるか一寸推測し兼ねます。兎に角、一般に好まれる方へ変つて行くことでせう。
3 探偵小説の流行はますます盛んになつて行くと思ひます。
4 江戸川亂歩。「心理試験」
ドイル「シヤーロツク・ホームズの冒険」
チヱスタートン「知り過ぎた人」
(新青年、大正十四年八月増刊、「私の好きな作家と作品」に書いた以外のもの)
(※1)原文ママ。
底本:『探偵趣味』大正14年9月号
【書誌データ】 → 「小酒井不木随筆作品明細 1925(大正14)年」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(評論・随筆の部)」
(リニューアル公開:2017年10月6日 最終更新:2017年10月6日)