「新青年」では平林氏の「予審調書」と甲賀氏の「ニッケルの文鎮」を面白く拝読しました。予審調書に於ては父子の情が科学的に描写されて居るところに心を引かれました。「ニッケルの文鎮」ではあの複雑な事件が歴然として書かれてあるのに感心しました。「苦楽」の江戸川氏の「闇に蠢く」は何といふ素晴しい作でせう。あの調子で続いて行つたら読者を唸らせずには置きません。作者の御自愛を祈ります。
底本:『新青年』大正15年3月号
【書誌データ】 → 「小酒井不木随筆作品明細 1926(大正15)年」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(評論・随筆の部)」
(最終更新:2014年11月23日)