私は常々通俗小説の発達を祈つてやまないものであります。読者となつて見るとき、愈よその感を深うします。久米、菊池、中村、三上、加藤(※1)諸氏の作品を私は常に愛読して居ります。これ等の諸作家が面白い小説を生産しようとして居られる努力を多とします。さうして新聞社なり雑誌社なりが一般にもつと作家を優待してくれるやうに希望します、さうすれば一層通俗小説は発展し、私たちの喜びは大きくなるでせう。又私は通俗小説を書く人たちが通俗小説専門の作家となつてくれることをむしろ望むものであります。
(※1)原文圏点。
底本:『不同調』大正15年8月号
【書誌データ】 → 「小酒井不木随筆作品明細 1926(大正15)年」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(評論・随筆の部)」
(リニューアル公開:2017年10月6日 最終更新:2017年10月6日)