参考文献/資料集 2003(平成15)年

(公開:2006年1月23日 最終更新:2020年5月17日)
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3月

解説 / 志村有弘

『べんせいライブラリー ミステリーセレクション 人間心理の怪』 勉誠出版 3月15日発行

隠蔽される少年への意志 / 長山靖生

『文藝別冊 江戸川乱歩』 河出書房新社 3月30日発行

 少年が登場する探偵物としては、日本に限って見ても少年探偵団に先行して、淡路呼潮の「哲雄少年」シリーズや、森下雨村の「富士男少年」シリーズなどがあった。さらに小酒井不木の「少年科学探偵」シリーズでは塚原俊夫という少年の職業探偵が登場する。塚原少年は卓越した頭脳と最先端の科学知識を駆使して、大人の名探偵顔負けの名推理を展開するのだが、しかし彼は大人の犯人と渡り合う腕力は持ち合わせておらず、無謀な冒険は極力避けようとする。「少年科学探偵」シリーズでは、大人の犯罪者と渡り合うような危険な肉体労働は、柔道三段のお兄さんこと大野青年や、警視庁のおじさんこと小田刑事が、もっぱら担っている。

6月

小酒井不木関連資料をめぐって / 阿部崇

『芳林文庫古書目録 探偵趣味』 第十四号 古書芳林文庫 6月発行

参照: 「小酒井不木関連資料をめぐって」

戦中派闇市日記 / 山田風太郎

『戦中派闇市日記』 山田風太郎 小学館 6月20日発行

昭和二十二年三月
九日(日)曇
(中略)
 日本の医者で小説や詩を書いた人書いている人にその名の中に「木」の字の多いのは面白い偶然である、「森鴎外」これは木が三つ集ったと見てよく本名まで林太郎と来ている。「正木不如丘」、「小酒井不木」「木下杢太郎」、それに「木々高太郎」etc。(後略)

昭和二十二年五月
二十四日(土)晴
(中略)
 小酒井不木『疑問の黒枠』読む。あまり上手だとは思われん。

昭和二十二年六月
四日(水)晴
(中略)
 小酒井不木『恋魔怪曲』読、いい年をしてよくまあ!

昭和二十二年十月
十五日(水)快晴
(中略)
 十月二十一日毎日ホールで開催される物故探偵作家慰霊祭「講演と探偵劇の会」招待券来る。
 主催・探偵作家クラブ、後援・サンデー毎日。
 物故作家=小酒井不木、甲賀三郎、牧逸馬、浜尾四郎、小栗虫太郎、夢野久作、田中早苗、井上良夫、大阪圭吉、平林初之輔、蘭郁二郎、渡辺温。
 とあるが、この中余が一篇でも読んだのは、小酒井、渡辺、牧、浜尾、大阪圭吉(この中、渡辺と大阪は各短篇一篇のみ)。甲賀も夢野も小栗も全く読んだことがないのだからヒドイ。(後略)

二十一日(火)曇
(中略)入って見ると森下雨村氏が登壇して「日本探偵小説発達史」をのべているところであった。〈新青年〉創業時代の想い出ばなしである。小酒井不木の出た頃、彗星のごとき江戸川乱歩の出現等を田舎爺い(実際田舎爺いに違いない)のごときユーモアとボクトツな口調ではなす。(後略)

9月

吉井勇「生霊」 梶井基次郎「Kの昇天」 小酒井不木「二重人格者」 / 山下武

『20世紀日本怪異文学誌――ドッペルゲンガー文学考』 山下武 有楽出版社 9月5日発行
 → 初出:『幻想文学』(掲載号未確認)

 ドッペルゲンガーの実在を信じ、自殺の直前まで「人を殺したかしら?」の未定稿と悽愴な格闘を続けた芥川や、迫り来る死を前にして、肉体から遊離した魂の月における再生の願いを一篇の小説に託した梶井基次郎を茶化すがごとく、ドッペルゲンガーを徹底的に戯画化した一人の作家がいた。日本探偵小説創生期の重鎮・小酒井不木その人である。(後略)

11月

『心理試験』を読む / 平林初之輔

『平林初之輔探偵小説選U』 論創社 11月10日発行
 → 初出:『新青年』 大正14年10月号

 

12月

魂 故郷に帰る/直筆の書やデスマスク/小酒井不木の遺品 蟹江へ/長男の妻ら町に寄贈 / 上田寿行

『中日新聞』 12月24日 第18面

 今回、同町へ寄贈したのは「至誠無息」の文字が書かれた不木の直筆書、肖像画とデスマスク。この日、同町今の産業文化会館内で、美智子さんが加藤定夫助役に目録を手渡し、その場で寄贈品をひもといて披露した。
 書にある「至誠無息」は、「やむことのない至上の真心」を意味し、不木の真剣な生きざまが表れている。美智子さんは「故郷に戻ってきたようで、本人も喜んでいると思う」と語った。