小酒井不木博士はいふまでもなく当代探偵小説界の第一人者、今回特に本誌の為にと数年間秘蔵の好材を先生独特の構想を以て、それこそ全力を傾倒して御執筆下さつたのがこの「好色破邪顕正」である。是こそ行詰れる従来の探偵小説界に一新紀元を劃(くわく)すべき最近の傑作中の最大傑作。既に第一回より謎は謎を生み、奇怪な大渦巻は物凄くも読者の胸に迫る。号を逐(お)うて更に高潮(かうてう)の大場面展開、次号を刮目して御期待あれ。
底本:『現代』昭和3年6月号
(公開:2017年9月15日 最終更新:2017年9月15日)