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書簡 大正十三(一九二四)年 9月25日 小酒井不木 田端から

冠省過日は高著を頂戴いたし難有く存じます又拙作をおよみ下さるよし御厚意を忝く存じます伊藤女史より御病臥のむね伺ひましたが季候不順の節どうか一層御大事にお体をおいたはり下さいとうに御礼の手紙をさし上げる筈の所、ついつい延引し申訣ありません小生も持病の胃腸を患ひ、床の上に日を送つてゐる始末であります
     即景
   朝寒や鬼灯のこる草の中
御一笑下さらば幸甚です 頓首
   九月二十五日          芥川龍之介
  小酒井先生 侍史

底本:『芥川龍之介全集 第二十巻』(岩波書店・1997年8月8日発行)

(公開:2009年1月19日 最終更新:2009年1月19日)