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小酒井不木博士断信

 寒くなりました、益々御健勝愈々御多忙のことゝ存じます(。)(※1)小生は昨今この寒さを避けむ為また床上生活を始めて安静にして居ります(。)(※2)医政誌の「趣味と道楽」大賛成に候早速返事して置きました(。)(※3)私はむかしから名流偉人の趣味や道楽を知るのが唯一の楽しみです、ボスウエルの書いたジヨンソン(※4)伝にはジヨンソン(※5)が道を歩くとき道ばたに立つて居る杭(ぽすと)に一々手を触れて歩いたといふことまで書いてありますがかゝる伝記こそ私の最も好む所で名士の趣味に関する逸話など多大の興味を以つて読むを常として居ます(。)(※6)この点に於て今回の催ほしには大々的に意義のあることゝ思ひます(。)(※7)真面目に答へぬ人があればそれはもはや吾党の士ではありません。
 御祝の俳句を一つ差上げます、たゞこれは寝て居て書いたものですから相成るべく写真などにはなさらずたゞ活字にして頂きたいと思ひます。(編集曰。百花欄参照)
 十二月は定めて御多忙でせう折角御健勝を祈ります。
   十一月二十九日朝   光次
   藻城詞宗侍史

(※1)(※2)(※3)原文句読点なし。
(※4)(※5)原文傍線。
(※6)(※7)原文句読点なし。

底本:『医学及医政』大正11年1月号

【書誌データ】 → 「小酒井不木随筆作品明細 1922(大正11)年」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(評論・随筆の部)」

(公開:2017年9月29日 最終更新:2017年9月29日)