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『経験』

小酒井不木

 骨に近いほど肉はうまく、墓にちかいほど人の言葉に味(あじはひ)がある。一個人の著作について見るも初期のものには空言(くうげん)が多く、晩年には真実が多い。空言(くうげん)は才能の所産であり、真実は経験の産物である。だから経験はすべてわれ等の学校である。而(しか)も、その最良の教師は、自己の経験に外ならぬ。

底本:『朝日』昭和4年4月号

【書誌データ】 → 「小酒井不木随筆作品明細 1929(昭和4)年」
【著作リスト】 → 「雑誌別 小酒井不木著作目録(評論・随筆の部)」

(リニューアル公開:2009年11月7日 最終更新:2009年11月7日)