展示期間:1月5日(火)〜1月31日(日)
鶴舞公園の近所に暮らした小酒井不木と、幼少・青年期を名古屋で過ごした江戸川乱歩。探偵小説やSF小説の発展に貢献した二人は、今から100年近く前の大正14年の、ちょうど1月に初めて対面しました。そんな二人の出会いの季節に鶴舞中央図書館では不木・乱歩の展示を行います。
『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』 辻真先 創元推理文庫 1月29日初版
→ 『深夜の博覧会』(東京創元社・2018年8月22日)
『探偵小説と〈狂気〉』 鈴木優作 国書刊行会 2月26日初版第1刷
【会期】2021年3月20日(土・祝)〜5月16日(日)
【会場】神奈川近代文学館第2・3展示室
■主な出品資料(ゆかりの大学、各地の文学館、博物館、個人が所蔵する貴重資料約600を展示)
江戸川乱歩「D坂の殺人事件」草稿 立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター寄託
大下宇陀児「硝子の街」草稿 箕輪町郷土博物館蔵
小栗虫太郎「黒死館殺人事件」原稿 世田谷文学館蔵
小栗虫太郎「完全犯罪」原稿 成蹊大学図書館蔵
木々高太郎「睡り人形」(「ねむり妻」)原稿 山梨県立文学館蔵
甲賀三郎「失業二人男」草稿 個人蔵
小酒井不木「犯罪文学研究」草稿 名古屋市蓬左文庫蔵
谷崎潤一郎「武州公秘話」原稿 芦屋市谷崎潤一郎記念館蔵
夢野久作「ドグラ・マグラ」草稿 福岡県立図書館寄託、九州大学附属図書館付設記録資料館寄託
横溝正史「八つ墓村」原稿 二松学舎大学附属図書館蔵、世田谷文学館蔵
「新青年」掲載挿絵原画(松野一夫、木村荘八、初山滋ほか) 個人蔵
※文学資料の他に「新青年」時代のモボ・モガのファッション・スポーツ資料を展示。
『江戸川乱歩大事典』 編者:落合教幸・阪本博志・藤井淑禎・渡辺憲司 勉誠出版 3月25日初版発行
『新青年』名作コレクション 『新青年』研究会編 ちくま文庫 4月10日第1刷
「毒及び毒殺の研究」(一九二二年十月〜二三年一月)は四回にわたって連載された科学エッセイであり、本書には最終回を収録した。犯罪や病癖といった危険なテーマを設定したうえで、文学や迷信を事例にその文化人類学的な意義を考察する特徴がある。ここでも古今東西の文学に描かれた毒殺が列挙されており、不木の持ち味をよく表している。
『裏切りの塔』 G・K・チェスタトン 南條竹則・訳 創元推理文庫 5月28日初版
巻頭の「高慢の樹」はチェスタトンの作品としては無類の面白さを持つ。こう書くと「ブラウン神父ものだって面白いではないか」と反論が返ってきそうだが、正確にいえばこの作品は誰が読んでも面白い面白さを持っている。本文庫の旧訳『奇商クラブ』に付された中島河太郎の解説には、大正十五年に小酒井不木によって訳されたこの作品に、国枝史郎が感激してしたためた長文の感想が紹介されている。そこに「往々この種の作品は『拵え物』として欠点を暴露するものでありますが、これにはそれが見られません」という一節がある。チェスタトンの作品が往々にして拵え物の極であることを考えれば、この作がどれほど異質かがわかろうというものだ。
蟹江町観光交流センター祭人 5月20日プレスリリース
蟹江町観光交流センターからお知らせです!
3周年を記念して5/26(水)朝10時から販売開始!
蟹江城址 御城印 1枚300円
フボクくんLINEスタンプ 32個セット120円
『蓬左』 第101号 名古屋市蓬左文庫 6月4日発行
もともと乱歩は経済的な余裕があれば学者になりたかった過去があり、アカデミズムの学問に対して敬意と興味を抱いていた。早稲田大学時代にE・A・ポーの小説に惹かれたのも、ポーの作品に満ちている理科学知識を応用した想像力の文体が理由だった。そうした乱歩にしてみれば、現にアカデミズムに籍を置き血清学の権威である不木の理知的で客観的な描写は、憧憬の対象になり得るものであったのだ。
もう一点、乱歩との比較で面白いのは、女性の描き方である。俗に「事件の影に女あり」というフレーズもあるとおり、探偵小説は如何せん露骨なジェンダー概念が物語構造に投影されがちである。その点を注意深く踏まえた上で両者の女性描写に注目してみると、乱歩に比して不木の方がよりいっそう悪女の怖さが強烈だ。
開催日時:2021年8月4日(水)〜9月2日(木)
開催場所:文化のみち二葉館 2階展示室7
江戸川乱歩は、幼少時代に名古屋に移住し、17歳で上京するまでの多感な時期を中区栄周辺で過ごしました。小酒井不木は、現・愛知県海部郡蟹江町に生まれ、後年名古屋に移住し、本格的に作家活動を始めました。乱歩が執筆した作品を不木が絶賛し、探偵小説家として推薦したことから、二人の交流が始まります。
今回の展示では、江戸川乱歩と小酒井不木の交流の様子や名古屋とのゆかりなどについて、作品や略年譜等をもとにご紹介します。
蟹江町観光交流センター祭人
開催期間:2021年10月1日(金)〜12月26日(日)※2022年2月27日(日)まで会期延長
スタート&ゴール:蟹江町観光交流センター祭人
会場:愛知県蟹江町内一円※周遊距離:約5キロ〜
日時:2021年10月30日(土)
場所:蟹江山 常楽寺 龍照院
朗読:菅沼翔也
今回は小酒井不木作品の中から「お寺」を舞台とした小説作品を「実際のお寺の本堂」を舞台として行います。
朗読に合わせての音響・照明の演出もあり、臨場感たっぷりの朗読をお楽しみいただけます。
(朗読作品紹介)「死体蝋燭」「遂に鐘は鳴った」
蟹江町歴史民俗資料館
期間:令和3年11月3日(水・祝)〜12月28日(火)
不木がいつごろから俳句をたしなむようになったのかは定かではありませんが、少年科学探偵シリーズの「紅色ダイヤ」の冒頭に主人公の塚原少年が詠んだ句として「菜の花や股のぞきする土手の子ら」を紹介しており、小説を執筆するかたわら、俳句にも親しんでいたことが分かります。昭和になり、探偵小説家として多忙を極める中、気分転換の意味で企てられたのが俳句会でした。「遊び半分の俳句会をやろうじゃないか、僕の知らない人でいいから集めてくれ」と自宅の玄関番をしていた岡戸武平に命じ、殿島蒼人、杉浦冷石、桃山葱雨らが集まり、句会が発足、この時不木邸の二階八畳間に「拈華微笑」(ねんげみしょう・仏教用語で以心伝心の意)の扁額が掛けられており、そこからこの句会は「ねんげ(拈華)句会」と名付けられました。昭和2年(1927)秋ごろのことだったそうです。不木は昭和4年(1929)に肺炎のためこの世を去りますが、たくさんの作品を残しています。掛軸の作品を見ると、挿絵師が絵を手掛けた画賛が多く、5人で詠んだ句を寄書した合作もあります。それらの作品からは、詠まれた句の情景や季節感だけでなく、人との交流を大事にした不木の人柄が垣間見えるようです。
展示資料一覧
No.1 書軸 秋雨や不犯の僧の水汲める 不木
No.2 画賛 柿の実に宵からつのる嵐かな 不木(絵柄:犬 絵師:木村晴三)
No.3 画賛 水無きを惜しみし池や秋の草 不木(絵柄:秋草 絵師:木村晴三)
No.4 画賛 秋浅く水ふうわりと澄みにけり 不木(絵柄:瓢箪 絵師:丹羽玉邦)
No.5 画賛 花野過ぎて千鳥の櫛を私す 不木(絵柄:稲を持つ娘 絵師:木村晴三)
No.6 画賛 蔦枯れて読み得たりける碑文かな 不木(絵柄:ベンチに男女 絵師:木村晴三)
No.7 画賛 着せかける褞袍おもてに按摩笛 不木(絵柄:角火鉢 絵師:木村晴三)
No.8 書軸 寒月や影いかめしき門構 不木
No.9 画賛 鼠さへ来ぬ夜ありけり冬篭 不木(絵柄:囲炉裏 絵師:木村晴三)
No.10 画賛 春風や朱の鳥居にすがる酔 不木(絵柄:絵馬と鳥居 絵師:不明)
No.11 画賛 うたへよ二度と来ぬ人の春 不木(絵柄:笠をかぶる女 絵師:鈴木夢平)
No.12 画賛 草餅に姉のいれ歯の光りけり 不木(絵柄:餅つき 絵師:木村晴三)
No.13 画賛 春風や大病癒えし母笑う 不木(絵柄:蛙を追う猫 絵師:木村晴三)
No.14 画賛 照明は申しぶんなし散る桜 不木(絵柄:傘をさす役者 絵師:木村晴三)
No.15 画賛 手品師も来てあふぎけり藤の花 不木(絵柄:藤娘 絵師:鈴木夢平)
No.16 画賛 春日や不用となりし薬壜 不木(絵柄:どくだみ草 絵師:木村晴三)
No.17 画賛 衣更帯に小猫のざれかかる 不木(絵柄:筍 絵師:木村晴三)
No.18 画賛 公園の灯のあかあかと春は行く 不木(絵柄:つつじ 絵師:木村晴三)
No.19 画賛 夏草の誘ひ合せて茂りけり 不木(絵柄:牡丹 絵師:木村晴三)
No.20 画賛 白帆が一つ暮れ残る海 不木(絵柄:男女 絵師:木村晴三)
No.21 画賛 湯上りや山からのぞく夏の月 不木(絵柄:女 絵師:木村晴三)
No.22 画賛 大原や八瀬やけぶりて夏の雨 不木(絵柄:蛙 絵師:金山浮水)
No.23 画賛 熱海路は浪音ひくし月見草 不木(絵柄:馬曳き 絵師:木村晴三)
No.24 書軸 乳ばなれのやうやう寝たり青葉宿 不木
No.25 合作 春昼やあやまりとどく隣の荷 不木/古写経に射る陽あかるしどうだん花 萬眞/老伴は鶴の如くにあたたかき 呉之/さしききぬ御花手桶の辛夷哉 梵夫/金銀の古写経拝し春が行く 茂弁
No.26 合作 枯萩や汐黒みする水たまり 不関/いた廂木の実吐く鳥来りけり 冬葉/茶の花や国師忌日の大徳寺 観/大文字や曇りて淡き東山 三幹竹/一雨は藪に残りて春日かな 不木
補足:不木資料室展示資料
画賛 布さらす水なまぐさき丹波かな 不木(絵柄:鬼 絵師:鈴木夢平)
画賛 大原や八瀬やけぶりて夏の雨 不木(絵柄:水車 絵師:金山浮水)
画賛 駒がたやふりかへり見るほととぎす 不木(絵柄:花魁 絵師:木村晴三)
画賛 春風やところどころの家普請 不木(絵柄:子を背負う母 絵師:木村晴三)