参考文献/資料集 1987(昭和62)年

(公開:2006年2月27日 最終更新:2009年10月26日)
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3月

医学博士 小酒井光次 / 茅原健

『ふるほんや』 第7号 3月31日発行

8月

執筆者紹介

『日本随筆紀行12 愛知・岐阜・三重 東海に朝日が昇る』 作品社 8月10日発行

9月

昭和モダニズムと『新青年』 / 鈴木貞美

『ユリイカ』 青土社 9月1日発行

 ナンセンスばかりが、この時期の『新青年』の特徴ではない。しっかり勉強もする。はじめは、モダン・ボーイは新しすぎるか、などといっていた森下雨村だが、しかし、モダン・ボーイたるものが(原文ママ)につけなければならない常識を説く講座をひらいてしまう。(中略)
 第一回は、平林初之輔が「社会科学」を担当(昭和二年六月号)。第二回は、石井重美の「生物進化論」。第三回は、古川龍城の「天文学」という具合にならび、第四回は小山内薫が「演劇に対する考察」、第五回、伊庭孝「音楽と舞踏」、第六回、村山知義「美術の通つた道」となかなかの豪華メンバーが並ぶ。石原純の「物理学」や小酒井不木の「法医学」もある。
(中略)かなり易しく書いてはあるが、尖端的なところに立っての紹介であるわけだ。
 このあたりが「趣味講座」全体を貫くモチーフである。モダニズムの教養主義といってよいだろう。

 映画とスポーツがモダニズムの時代の娯楽を代表するものだとしたら、風俗を代表するのは恋愛の定着だろう。
『新青年』は昭和四年一月、「恋愛学」の講座を開始する。執筆は正木不如丘。
(中略)
 正木の講座第一回には、「恋愛術」という読物記事が組みあわされている。小酒井不木が「恋愛東西」と題して例によって博識ぶりを示している。「艶道通観」の恋の吉凶占いからフックス、はたまた媚薬の数かずまで。

〈新青年〉とSF――海野十三を中心に / 横田順彌

『ユリイカ』 青土社 9月1日発行

 日本作家の作品としては、SFボーダーライン作家の城昌幸が「怪奇の創造」を大正十四年に、海野とならぶ、日本SFの先駆者とされる小酒井不木が、本格SF「恋愛曲線」を大正十五年に発表し、昭和二年には、これもSFボーダーライン作家の稲垣足穂が、「童話の天文学者」で初登場している。文芸評論家でもあった平林初之輔の「人造人間」は、海野のデビュー号に載った。

「不健全派」の系譜――小酒井不木の位置 / 松山巖

『ユリイカ』 青土社 9月1日発行

(前略)自分の仕事を卑下しているのは乱歩よりも不木の方であって、彼は自らの位置を一歩退き、低くして語るのが常のようだ。けれど、もとより不木は乱歩の援護者としてのみ生きた訳ではない。彼自身の活動は『新青年』にとっても、また彼がいう「日本の探偵小説界」にとっても大きな意味をもっている。
 不木の第一の功績は、『新青年』誌上に連載した「毒及毒殺の研究」(大正十一年八月より十月)、「殺人論」(大正十二年一月より十月)、「犯罪文学研究」(大正十四年より大正十五年三月)などの研究であろう。これらの論は体系として纏っているとは言い難いが、そのことが現在ではかえって、自在に彼の医学的知識や文学上の教養が発揮されていて面白い。いずれも不木ならではのペダントリーに溢れている。(中略)
 彼の同様の研究には小説上の探偵や犯罪ではなく、現実の探偵や犯罪を調べあげた「西洋探偵譚」や「近代犯罪事実談」などが他にもあるが、こうした文章が『新青年』の愛読者をはじめ、青年層の知識欲をどれほど満たしたか想像に難くない。というよりも、彼の仕事が農村青年むけの修養雑誌として発刊した『新青年』の編集の内容を変えたばかりか、また未熟であった「日本の探偵小説界」に厚みをどれほど加えたか計り知れないものがあるように思える。実作者としての江戸川乱歩と批評家としての平林初之輔と共に研究家としての小酒井不木の存在は初期の探偵小説界にとりいずれも大きいのである。

 注目すべきなのは、三つの作品の筋が重なるということではなく、乱歩が「二銭銅貨」によって開拓したミステリーの世界が、不木の世界を通してみると、夢野久作の「ドグラ・マグラ」へと結ぶことができるということであり、不木が望んだ探偵小説の先に「ドグラ・マグラ」があるのではないか、ということである。
 平林初之輔は、乱歩や不木の小説の中にある不健全さを批判し、そこに頽廃期の兆を見た。けれど、大衆小説であると同時に探偵小説が時代の鍵を解明する鏡としての機能があるとすれば、平林の言葉とは逆に久作の「ドグラ・マグラ」を頂点とする変格派の作品こそ、昭和初期という頽廃した時代を確実に映しとっていたのではあるまいか、と思えるのだ。

『新青年』とその時代 / 江口雄輔

『ユリイカ』 青土社 9月1日発行

年表『新青年』とその時代 / 江口雄輔編

『ユリイカ』 青土社 9月1日発行