『喜多村緑郎日記』 編者 喜多村九寿子 演劇出版社 昭和37年5月16日発行
『SRマンスリー』 SRの会 6月発行
→ 『戦後創成期ミステリ日記』 松籟社 2006年4月14日発行
乱歩ものの生命の長さは、ミステリの煽情性が、時を超えて少年の猟奇心を充たすことにもあろうが、それでは森下雨村や小酒井不木の少年ものが亡びた理由がわからない。乱歩ものは、いかにルパンやジゴマの焼きなおしとしても、やはり全体の想像力は乱歩のものであるし、あの文体が通俗少年によくむいている。人物が少年のイマジネーションをとらえるよう、ツボを心得ている。暗いけれど、ゼッタイ陰惨ではなく、血みどろもない。凡百の少年怪奇ものにはどうしても超えられない優秀性があるのである。