参考文献/資料集 1936(昭和11)年

(公開:2014年11月20日 最終更新:2014年11月20日)
インデックスに戻る

8月

(幽界通信)転居御通知―夢野久作― / 石井舜耳

『ぷろふいる』 8月号

 さて、ヒヒヒヒと笑つてから周囲(あたり)を見廻すとすぐ眼の前にニコヽヽしながら私を迎へてくれた人があるんです、お解りでせう、さうです、小酒井不木博士と濱尾子爵です。聞けばお二人はもうズツト前から例の前知魔の台帳を調べて私の来る日を指折り数えてお待ちになつてゐたといふんだから恐縮しましたよ(。)
 小酒井博士と私は初対面でしたが会ふとイキナリ例の「ドグラマグラ」をほめられました、あれは娑婆向きのものではないがこゝでは非常な好評でもう百版はとうの昔に突破してゐるよと附け加へられました、これには私も少々オテレになりましたよ。

(幽界通信)探偵小説の尺度計―平林初之輔― / 石光琴作

『ぷろふいる』 8月号

 ……『ぷろふいる』といふ探偵雑誌から幽界通信を書けとの依頼状が廻つてきた。これは珍らしい註文だが、私はこちらに来ても非常に多忙を極めてゐる。雑誌なども何から何まで読まねばならないし、その上に小酒井博士、川田功、渡邊温、夢野久作、濱尾四郎、小舟勝二、それに私とでやつてゐる『幽界探偵』といふ探偵雑誌に毎日短い評論を書く義務を持つてゐるので、非常に多忙なのである。

 木々高太郎氏は医学畑から生れたブレイン的存在であり、小酒井博士の幽界への退転後独特な位地を探偵文壇に占め、その医学的立場に依つて或ひは第二の小酒井博士と称されてもいゝかの観を抱かせてゐるが、併し乍ら医学から出発してゐるが小酒井氏と木々氏とは、作品の傾向が今のところ違つてゐる――これは探偵小説の読者なら大抵気付く事であり、小酒井博士が怪奇・凄動・異妖の物語を特意とするのに引換え、木々高太郎氏が本格探小偵説に於て(例をとれば「人生の阿呆」の如きである)異様な情熱をもつて本格的のヴエランテンと目される甲賀三郎氏を凌ぐあたり、同じ畑から出発しても、同傾向の創作をするといふ事にはならないのであるが、このあたり江戸川乱歩氏の言葉を借用すれば、探偵小説の多様性をますます多様ならしめる意味に於て、非常に面白く、また注目すべき点であらう。。

(幽界通信)『其処はおとし穴だよ』―小酒井不木― / 岡戸武平

『ぷろふいる』 8月号

参照: 「(幽界通信)『其処はおとし穴だよ』―小酒井不木―」