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夕刊小説予告 探偵小説 生ける宝冠

【原名】仕込杖 瑞典 ドウーゼ作 小酒井不木訳

 連載中の社会奇談「毒酒の乾杯」明日完結するを待つて、右の探偵小説を連載する事になりました。原作者エス・アー・ドウーゼはドイルの深刻とルブランの怪奇を兼備へた瑞典の巨匠、欧米を通じて第一流に推さるべき大作家である事は茲に申すまでもありません。此の一篇は原名を『仕込杖』と言ひ、作者の記念すべき出世作であると共に作中の名探偵レオ・カリングが抑も世に出る最初の大事件である事は一層期待をそゝるでせう。
 本社の乞を容れて自ら訳筆を執られた小酒井博士が、「ドウーゼの作品中最も傑出せるもの」と評せられたに見ても、その価値の一斑が窺はれるでせう。

底本:『国民新聞』大正14年2月19日夕刊