序に述ぶべきことは、本文の「序論」の中に委しく書いて置いたから、わざゝゞ繰返すことをしない。はじめ著者は「拷問」、「刑罰」に就ても述べるつもりであつたが、それに就ては別に一書をあらはさうと思ふから、本書には「殺人の犯罪学的意義」と、「殺人探偵」の記述にとゞめる。 本書を著はすに際し、博文館の森下雨村氏が種々援助して下さつたことは、著者の感謝措く能はざる所である。 大正十三年七月 不木軒主人
底本:『殺人論』(京文社・大正13年9月)