兼好法師を気取つた訳ではないが、徒然なるまゝに心に浮んだよしなしごとを、そこはかとなく書き散らしたのがこの一巻となつたのである。「あやしうこそ物ぐるほしけれ」といふ気分も起らぬけれど、読む人にとつては或は気ちがひの寝言に見えるかもしれない。 大正十三年十一月 不木軒主人
底本:『三面座談』(京文社・大正14年3月)