本書に収めた各研究は、私が過去一ヶ年間に、諸雑誌新聞に発表したものである。私は今後犯罪探偵を取り扱つた小説の創作に力を注ぎたいと思ふので、この書は私自身の一時代を割するモニユメントとして、私にとつては頗るなつかしいものである。 各篇それゞゝちがつた時期に発表されたものであるから、二三、文中の事項が重複して記述されてあるけれども、この点はよろしく諒恕して頂きたいと思ふ。 大正十四年三月 不木軒主人
底本:『近代犯罪研究』(春陽堂・大正14年5月)