私は元来学究の徒でありまして、研究室以外の世の中をあまり見て居りませんですから、私の作品には研究室のにほひが濃厚に附きまとつて居ります。けれども、それが一方に於て私の作品の特色ともなつて居ると思ひます。本集には、私の最も力を注いだ探偵小説を集めました。
集中の『少年科学探偵小説』は、少年諸君のために書かれたものでありますけれど、大人の方々にも、きつとお気に入るだらうと信じます。
偏に御愛読あらんことを希ひます。
作者
底本:『現代大衆文学全集第七巻 小酒井不木集』(平凡社・昭和3年3月)