参考文献/資料集 1998(平成10)年

(公開:2006年1月23日 最終更新:2009年1月12日)
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1月

〈大衆〉の登場――ヒーローと読者の時代 / 紀田順一郎・池田浩士・川村湊・栗原幸夫・野崎六助

『文学史を読みかえる2 〈大衆〉の登場――ヒーローと読者の20〜30年代』 責任編集・池田浩士 インパクト出版会 1月11日発行

野崎 むしろ「二銭銅貨」など初期のものは、その当時の都市のルンペンプロレタリアートの「怨念」みたいなものを乱歩が救いあげたんじゃないかと思うんですけれど。(中略)
紀田 マイナーな作家の中にはかなりいるはずなんですけれど、いま残っている作家の場合は意外とそういう方に題材を求めていないですね。たとえば小酒井不木の「恋愛曲線」、夢野久作の「あやかしの鼓」、平林初之輔の「予審調書」など、いずれもニュアンスが違いますね。その点では乱歩に特異性、先見性があるんじゃないかと思うんですけれど。乱歩はある意味で題材的には私小説じゃないですか。職業に就けない、どこにどうしていいかわからない都会の住人の状況を描いているということでは共通性があります。これが時代が下って、探偵小説の第二のブームに登場する木々高太郎、小栗虫太郎らになると、題材のとりかたは初期の江戸川乱歩とまったく違ってきます。

〈大衆〉というロマンティシズム / 池田浩士

『文学史を読みかえる2 〈大衆〉の登場――ヒーローと読者の20〜30年代』 責任編集・池田浩士 インパクト出版会 1月11日発行

 だが、じつは、大宅壮一が文学の集団的生産を提唱し、翻訳の領域でそれを実行しつつあったまさにそのころ、日本の大衆文学もまた、小説作品の集団的制作を現実に実践していたのである。その実践の舞台となったのは、ほかならぬ都市型大衆文学のメッカと目されるようになっていた雑誌『新青年』であり、二〇年代に生まれた新しい大衆的メディアとしての週刊誌だった。
 『新青年』は一九二六年五月号から十月号まで、六回にわたって、「五階の窓」という探偵小説を連載した。それは、発端部を江戸川乱歩が書いたのを受けて、他の五人の作家が順を追って事件の展開と解決を描くかたちの、連作小説だった。第二回は平林初之輔が受け持ち、以下、森下雨村、甲賀三郎、国枝史郎が書き継いで、解決篇は小酒井不木が担当した。この試みが、同じ『新青年』の二八年二月号から九月号まで連載された「飛機睥睨」では、さらに一歩すすめられたのである。この探偵小説は、もはや複数作家による連作にとどまるものではなかった。文字通りの合作、集団的制作によるひとつの作品だった。土師清二、国枝史郎、長谷川伸、小酒井不木、江戸川乱歩の五作家が集まって口頭でプロット案を出しあい、そのやりとりを記録したものに手を入れて作品を完成させる、という方法がとられたのである。

3月

 

『江戸川乱歩リファレンスブック2 江戸川乱歩執筆年譜』 名張市立図書館 3月31日発行

5月

解説 / 鮎川哲也

『怪奇探偵小説集1』 角川春樹事務所 5月18日発行