参考文献/資料集 1980(昭和55)年

(公開:2017年10月20日 最終更新:2017年10月20日)
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12月

探偵小説の装幀 恐怖の造形 空中紳士(耽綺社)

『名作挿絵全集 第八巻』 平凡社 12月10日発行

河野通勢装幀 昭和4年刊 博文館

坪内節太郎

『名作挿絵全集 第八巻』 平凡社 12月10日発行

 岐阜県各務原生まれ。松原三五郎に師事。洋画のほか、水墨画、役者絵を得意とした。昭和三年大阪洋画協会、四十三年墨彩会の結成に参加。独立美術協会展、行動美術協会展などで活躍する一方、亡くなる直前まで新聞、雑誌に挿絵、表紙絵を描きつづけた。挿絵の代表作に「飛機睥睨」、著書に「絵画人情」「歌舞伎画帖」などがある。(つぼうち・せつたろう/一九〇五〜七九)

河野通勢

『名作挿絵全集 第八巻』 平凡社 12月10日発行

 長野市生まれ。本名通勢(みちせい)。独学で洋画を修得し、岸田劉生との出会いから大正七年草土社に参加。大正九年執筆、十一年刊行の長與善郎作「項羽と劉邦」で挿絵・装幀を担当、一躍挿絵界に名を広めた。代表作に耽綺社「空中紳士」(単行本)、山村暮鳥作「鉄の靴」、白井喬二作「富士に立つ影」、村松梢風作「ふらんすお政」、田中貢太郎作「旋風時代」など。(こうの・つうせい/一八九五〜一九五〇)

大澤鉦一郎

『名作挿絵全集 第八巻』 平凡社 12月10日発行

 名古屋市生まれ。東京高等工業学校図案科中退。大正八年再興日本美術院展洋画部に初入選し、以後春陽会での制作活動のかたわら、大正末期から昭和はじめにかけて、『新青年』『大衆文芸』などの雑誌に挿絵を描いた。挿絵の代表作に「メデューサの首」「疑問の黒枠」など。(おおさわ・せいいちろう/一八九三〜一九七三)

小説と時代――[ 推理小説の展開 / 尾崎秀樹

『名作挿絵全集 第八巻』 平凡社 12月10日発行

 研究・評論の面では小酒井不木が奮闘し、「毒及毒殺の研究」(大正十一〜十二年)、「殺人論」(大正十二年)、「犯罪文学研究」(大正十四〜十五年)などの大作を手がけ、豊富な例証をあげながら、古今東西の文献を引き、医学者としての客観的裏づけを持つ犯罪研究を展開した。不木は生理学を専攻した学者だったが、留学中胸を患い、帰朝後はもっぱら療養につとめるかたわら、多くの探偵小説や啓蒙書を執筆し、草創期の探偵文学界に貢献した。

挿絵史展望――[ 創生期の探偵小説と挿絵 / 山村正夫

『名作挿絵全集 第八巻』 平凡社 12月10日発行

 乱歩は引きつづき、「心理試験」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」(いずれも大正十四年)など、初期の代表的短篇群をやつぎ早に発表している。その目覚しい活躍が、他の愛好家たちを刺激し、続々と新作家が輩出した。乱歩以前に登場した横溝正史、水谷準、角田喜久雄のほかに、大正十二年には甲賀三郎が、十四年には小酒井不木、大下宇陀児、渡辺温、城昌幸、牧逸馬らが、さらに十五年には平林初之輔、国枝史郎、夢野久作らがデビューしている。喜久雄、三郎、初之輔らは本格物、宇陀児は犯罪物、不木が医学探偵物、準、昌幸が幻想物、逸馬はその名前のほかに谷譲次の名でメリケン物を書き、それぞれ異なる作風に特異性を発揮した。