『温灸治療法』 東京理学療院 昭和5年?
小酒井博士のお説の如く胃腸病を惧れたり、病気ばかり可愛がつて体を乾干しにする様な方法は最早や昭和時代の眼醒めた人の行ふ可き療法ではありません。胃腸病者だからと言つて胃腸の活動を休止させては到底根本的治療の不可能な事が、小酒井博士、杉本博士其他多くの医学者間に唱へられ始めた現今、既に長年の研究と数万の実績を示して易々と其理想を実現し、世の驚異的歓迎を受けて居るのが、ラヂウム温灸治療器に依る胃腸病の治療法と鍛錬術であります。
『なぎの花』 那須茂竹 三益社 昭和5年2月20日発行
これまで先生は、幾度か死すべくして、而かも不思議に生きられました。今回もそうであらうと念じてゐましたが、遂に永劫の別れとなりました。
先生が私に申されたことがあります。
「丁度十年間病気のために、研究室の仕事に遠ざかつてゐたが、自分のやらうと思つてゐることを、世界の誰もが、今だに、やつて呉れない。近来非常に健康になつたから、創作のほかにゼロヘミーの研究がして見たい」と。
『犯罪学雑誌』 2月号
△昨年は小酒井不木博士と当編輯部と協力して、犯罪の新らしい方面の研究に着手する積りでありましたが、小酒井不木博士が不幸にして長逝せられたので、この方面の研究は暫らく、見合さなくてはならぬ様になりました。其代りに各大学の法医学教授が、本誌の編輯顧問として御教授下され、法医学の鑑定例を御報告して下さる様になりました。つまり「臨床法医学」とでも云ふ領域に本誌の一面を向ける事になるのでしやう。近々京都の小南教授、岡山の遠藤教授、千葉の加賀谷教授の処から御報告下さる事になつてます。
『夫婦戦線異状なし』 原田宏 中村書店 昭和5年2月27日発行
コナン・ドイルは申すに及ばず、ルブラン、ガボリオ、マツカレー、ヅーゼ、サツパー等々々の原書から、日本ものでは、江戸川乱歩、小酒井不木、甲賀三郎、谷崎潤一郎等々々の作品が、へし合い、もみ合い、鮨ずめに詰みこんであるのである。
『小酒井不木全集 第十二巻』 小酒井不木 改造社 昭和5年5月21日発行
『新潮』 6月号
→ 『平林初之輔探偵小説選2』 論創社 2003年11月10日発行
(前略)
第二に、小説でこそジャーナリストが課題を与えるということは比較的珍しかったが、ジャーナリズムの他の分野でではそれはずいぶん広い範囲にわたって行われていたことで、中には故小酒井不木氏のように、何か課題を与えてもらった方がずっと物が書きよいというような傾向をさえ与えていたものである。
『平林初之輔探偵小説選2』(論創社・2003年11月10日発行)より引用。
(挟み込み)『小酒井不木全集 第十七巻』 小酒井不木 改造社 昭和5年10月10日発行
『犯罪科学』 11月号
安死術といふのは小酒井不木の小説にもある通り、到底もう助かる見込みのない人間を死の苦痛なしに安らかに死なせる方法である。カンフル注射の怨敵と心得てもらひたい。(後略)