書評・新刊案内

(公開:2006年1月23日 最終更新:2006年1月23日)
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『恋愛曲線』

新刊紹介

『大衆文芸』 昭和2年3月号

恋愛曲線……小酒井不木氏著
小酒井氏の最初の創作探偵小説集である。同氏の探偵小説は従来、あまりに学究的である。研究室を出でない物である――と云ふ様な批難をきいた。又応々にして私自身ですらさう云ふ感じがした。けれども、此の一冊を通読して見るとさう云ふ感じはどこにもない。実に不思議な気がした。我国探偵小説家の鼻祖としての小酒井不木氏の存在はハツキリと確立されている。どの一篇をぬき出して見ても、周到な用意と、推理の巧みさ、如何にも緻密な同氏の手腕がうかゞはれて面白い。私は巻頭の恋愛曲線を一番面白く拝見した。(定価二円四六判三三三頁 日本橋区春陽堂発行)