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『医談女談』(人文書院)序文

 

 もとより幽玄微妙なる学理の紹介でもなければ、苦心惨憺たる研究業績の発表でもなく、医者臭き男が、自分の趣味をさらけ出した随筆集である。従つて著者はこの書に却つて特種の執着を覚ゆる。さうして、大方の士に存外喜んで読んで貰へさうな気がする。円本大流行の時節に際して、久しくこの種の書物を公にしなかつた著者は、本書の出版を敢行して下さる人文書院主に感謝し、併せて、原稿の整理校正等一切の雑事を処理して下さつた畏友野村瑞城氏に鳴謝する。

 昭和三年九月 小酒井不木

 

底本:『医談女談』(人文書院・昭和3年10月)